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観光地の実時間情報に基づく観光者の満足度向上のための巡回スケジュール生成手法

本研究では,観光者が訪問を希望する観光施設をできるだけ多く巡回できるようなスケジュールを生成することを目的とする. 適切なスケジュールを生成する手法が確立されれば,観光者が効率よく多くの観光施設を巡回できるようにスケジュールを推薦するシステムを開発することが可能となる. 観光者がより多くの観光施設を巡回することは,観光者にその観光地の良さを十分に堪能してもらうために非常に重要である.

適切なスケジュールを生成するためには,観光地の未来の状況を予測する必要があり,そのために本研究ではシミュレーションを用いる. 移動経路および観光施設の混雑はお互いにさまざまな要素が絡み合っており,それらを同時に考慮してスケジュールを調整することは困難であるが,

シミュレーションを用いることで,各観光者にどのようなスケジュールを提示したとき満足度が向上するかの予測を行うことができる.

シミュレーションを用いて未来予測を行うためには,観光者の遷移傾向が必要となるが,観光者の遷移傾向を予め正確に予測することはできないという問題点がある. 上記で述べたような情報推薦システムを想定すると,システムを利用している観光者(システム利用観光者)は推薦したスケジュール通りに巡回を行うものと仮定することで, 遷移傾向を得ることができるが,システムを利用していない観光者(一般観光者)の遷移傾向は予め正確な値を得ることはできない. シミュレーションを用いた観光者の巡回スケジュール生成に関する従来研究では,すべての観光者がシステム利用観光者であることを仮定していた. そのため,一般観光者が存在する場合,シミュレーションによる未来予測が現実のものと異なってしまい,適切なスケジュール推薦ができなくなってしまう可能性がある.

本研究では,実時間情報を用いて一般観光者の遷移予測を修正し,それにともない提示するスケジュールをリアルタイムで更新することで,この問題に対処する. その日,各観光者が実際どのスポットをどのような順序で巡回したかの遷移の情報を,実時間情報と定義し,随時追加される実時間情報をシミュレーションに組み込むことで, シミュレーションによる未来予測がより現実のものに近づき,適切なスケジュールを推薦することができると考えられる.

提案手法では,実時間情報に基づき一般観光者の観光施設間の遷移傾向を推定し,そこから各観光施設の混雑傾向を数値化する. 実時間情報に基づき一般観光者の影響をシミュレーションに反映させるためには,少ないデータで安定した推定結果を得る必要がある. 観光施設間の遷移傾向をそのままシミュレーションに反映させるのではなく,各観光施設の混雑傾向に変換してから反映させることで, 観光施設の組み合わせ数ではなく,観光施設数分の推定をすることにつながり,少ないデータで安定した推定を行うことができる.

上記のように実時間情報より推定した一般観光者の影響を,シミュレーションに反映させ未来予測を行うことで,リアルタイムでスケジュールの更新を行う. 数値化した一般観光者の混雑傾向より,各観光施設の収容可能人数が減少している状態を想定することで,シミュレーションに一般観光者の影響を反映させる. 観光者が観光行動を行っている間,随時その時点から観光行動終了までのシミュレーションを行うことで,現在推薦しているスケジュール通りに巡回できるかの判定を行う. 巡回できない場合,訪問目的地の変更,削減を行うことでスケジュールを更新し,再度シミュレーションを行う.

以上のように実時間情報を用いて一般観光者の遷移予測を修正し,それにともない提示するスケジュールをリアルタイムで更新することで満足度が向上するかの実験を,シミュレータを用いて行った. まず,始めに与えられた遷移傾向が誤っていた場合でも,提案手法により実時間で遷移予測を修正しスケジュールを更新することで,満足度を向上させることができることを実験で示した. 次に,観光者の観光施設間の遷移傾向をそのままシミュレーションに反映させた場合と,各観光施設の混雑傾向を数値化することでシミュレーションに反映させた場合の比較実験を行い,前者では困難であった実時間における適切なスケジュール更新を,後者は可能にしていることを確認した. 最後に,評価に用いるシミュレータにおいて,さまざまなモデルで一般観光者のモデル化を行うことで,提案手法の妥当性を検証した. これらの結果より,実時間情報を用いて一般観光者の遷移予測を修正し,リアルタイムで適切にスケジュールを更新することができたと言える.