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防犯カメラ映像における条件分割型適合性フィードバックによる特定人物画像検索

近年,防犯,犯罪行為の証拠確保,歩行者動向分析などを目的として, 金融機関,空港,繁華街など街の至る所に,数多くの固定カメラ(防犯カメラ)が設置されている. これらの防犯カメラ映像は,犯罪者追跡や迷子捜索などの特定人物の足取り調査にも利用されている. こうした調査には,できるだけ漏れなくその人物が映っている映像を見つけ出し,いつ,どのカメラでその人物が映ったのかを知る必要がある. 従来,こうした調査は人手で行われてきたが,これには膨大な時間とコストが必要となる.

一方で,近年防犯カメラ映像を対象とした人物照合に関する研究や 類似画像検索に関する研究が,コンピュータビジョンの分野で盛んに行われている. これらの技術を応用し,防犯カメラ映像中から特定の人物が映っているフレームを検索することで, 防犯カメラ映像解析による特定人物の足取り調査を支援することが出来れば, 人手による作業が大幅に減り,有用であると考えられる.

これを実現するためには,防犯カメラで観測された 人物の人物画像(人物を外接矩形で切りだした画像)を登録した人物画像データベースを作成し, その中からある特定の人物の人物画像を全て検索すれば良い. 本研究では,このように人物画像データベースを作成し, その中から特定人物の人物画像を全て検索することを特定人物画像検索と呼ぶ.

従来提案されてきた一般的な特定人物画像検索の手順は以下のとおりである. まず,防犯カメラ映像に対して人物検出・人物追跡・特徴量抽出を行うことで, カメラ映像中に映った全ての人物について, その人物がカメラ映像内に入ってから出ていくまでの人物画像列,それに対応する特徴量列,観測されたカメラID,観測時刻で構成される レコードを作成し,人物画像データベースに登録する. そして,ユーザ(検索を実行する人物)が用意したクエリ画像(1枚の被検索者の人物画像)と データベース内の全てのレコードとの距離を人物照合を用いて計算し, 距離が小さい順にそのレコードに含まれる人物画像を結果としてユーザに提示する.

ここで,人物画像の特徴量は照明,遮蔽の有無,被写体の姿勢,解像度などの撮影条件によって大きく変化するため, 特定人物画像検索における人物照合には, (1)同一人物の人物画像の特徴量同士でも撮影条件が異なれば特徴量間の距離が離れてしまうため, クエリ画像と撮影条件の異なる被検索者の人物画像のみを含むレコードの検索順位が下がってしまう, (2)本来異なる特徴量を持つ別人の人物画像の特徴量が,撮影条件によってはクエリ画像の特徴量と類似してしまう場合があり, そうした別人の人物画像の検索順位が上がってしまう, という2つの問題がある.

この2つの問題に対処する試みとして, Metternichら,Fischerらは 特定人物画像検索において適合性フィードバックを用いて, 検索結果に含まれる様々な撮影条件の下での被検索者の人物画像をクエリに反映することで, 問題(1)に対処することを提案している. しかし,適合性フィードバックは問題(2)には対処することができない.

そこで,本研究では, 人物照合を撮影条件ごとに分割して行うことで 問題(2)に対処できる「条件分割による検索」を新たに導入し, 問題(1)に対処できる「適合性フィードバック」と組み合わせた 条件分割型適合性フィードバックを提案し, 特定人物画像検索における人物照合の両方の問題に対処する.

条件分割による検索は, 人物照合を撮影条件ごとに分割して行うことで, ある撮影条件の下で撮影された被検索者の人物画像の特徴量分布と, 別の撮影条件の下で撮影された別人の人物画像の特徴量分布が重なっていたとしても, 重なった分布に存在する別人の人物画像を含むレコードが検索上位に現れることを防ぎ, 問題(2)に対処できる.

これを実現するためには,事前にデータベース内の全ての人物画像に対して, 予め定めたいくつかの撮影条件を付与する必要がある. また,それらの撮影条件の下での被検索者の人物画像を用意する必要がある. 提案手法では,人物追跡で得られる情報をもとに,データベース内の人物画像に対して撮影条件のラベルを付与し, 条件分割に使用する撮影条件の下での人物画像を適合性フィードバックを用いて獲得する.

防犯カメラ映像からの特定人物画像検索における提案手法の有効性を確認するために, 商業施設に設置された防犯カメラの映像に対して,特定人物画像検索を行い, 10人分,合計146回の検索結果の平均で評価した. その結果,提案手法が従来手法よりも,検索上位1000件目での再現率が58.5%から,72.2%へ13.7ポイント上昇し, 提案手法の有効性が確認できた.