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描画密度に基づく多属性データの可視化

データの可視化技術は自然科学・社会科学の様々な分野で重要な役割を果たす技術である. 本研究はその中でも,3次元格子状に配置された多属性の数値データの可視化手法を対象とする. 3次元格子状の数値データは人体のMRIデータ,地質データ,大気の気象データ,海洋気象データ等, 自然科学の分野で多く用いられており,本研究では特に海洋気象データを対象としたデータの可視化について取り扱う. 可視化において重要なのは,単なる数値の羅列であるデータから, 人間がデータの大局的な構造を読みとれるようにするための技術である. 可視化手法として単一属性データの可視化を目指した従来手法は多くある. しかし,データの元となる自然現象などの構造的特性は,様々な属性同士の影響によって発生する例が多く, 単一の属性値をそれぞれに可視化するだけでは,このような構造的特性を読み解くためには不十分である. これに対し,複数の属性を同時に可視化する手法が近年盛んに研究されている. コンピュータグラフィックスによる3次元への可視化手法は,自然現象などの立体的な構造的特性を読み解くには有効である一方で, 可視化されたある属性値の情報が,他の属性値の情報を遮蔽してしまうという問題が存在する. この遮蔽の問題を解決するために,全ての情報を2次元画像上に,遮蔽が発生しないように敷き詰めるように可視化するという手法も存在するが, 属性値の物理的な配置が意味をもつようなデータに対しては効果がない. そこで本研究では,属性値の物理的な配置が意味をもつようなデータを, 遮蔽の問題を解決しながらも2次元の画像上へ可視化する手法を提案する. これを実現するためには,画像上で遮蔽を引き起こす要素の数を減少させる,というのが基本的なアイディアとなる. しかし,要素を減少させることで,その要素が可視化している情報を損失してしまうという問題が起こる. これに対し本研究では,画像上において遮蔽が大きく発生するのは局所的な領域にとどまるという点, そして,遮蔽が少ない領域においては,近傍の遮蔽されていない部分の情報から遮蔽された部分の情報を視覚的に補間できるという点に注目した. 遮蔽が多く存在する領域においてのみ,遮蔽された要素の情報が補完できる程度にまで遮蔽の要因となる要素を減少させれば, 遮蔽の原因となる要素の情報の損失は抑えられる. 具体的には,まず単一の属性値を様々な手法で可視化し,得られた画像を合成する. 合成した画像を小領域に分割した後,各小領域において遮蔽がどの程度発生しているかを定量化し,この値を描画密度として定義する. 描画密度が閾値を超える領域においてのみ, 遮蔽の要因となっている属性値を,描画する画像上の要素の密度を下げて再度可視化する. これによって複数の属性を同時に可視化する際に遮蔽を減少させつつも,情報の損失を抑えることを目指した. 海洋気象データの複数属性を,提案した手法に基づいて可視化する前と後の画像に対して, 画像上で遮蔽された属性値と,遮蔽している属性値の双方について,情報の読み取り精度の比較をする実験を行った. 実験では,2パターンのデータに対し,提案手法を用いることによって大きく遮蔽が減少した領域を抽出した画像を用意した. 2つのグループに分けた被験者に,データのパターンと提案手法の使用の前後の組み合わせを変えた画像を提示し, 画像上に引かれた線分上での属性値をグラフとして描いてもらうユーザーテストを行った. その結果,提案手法を適用することによって, 属性値が大きく遮蔽されていた領域において,遮蔽を低減するとともに読み取り精度を向上させることが確認できた. 一方で,遮蔽の要因となっている属性値の読み取りにおいては,提案手法の適用後に精度が下がるという結果が得られた.