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{複数の点群に対する位置合わせ手法の性能比較}

{リアルなCG映像コンテンツの作成や,自動車事故の被害予測システムの開発などへの利用を目的とし,実物を忠実に再現した3次元モデルに対する需要が高まっている.実物体の3次元点群を精度よく計測できる手法の1つに,パターン光投影法がある.この手法では,実物体を複数方向からカメラで観測し,三角測量の原理を用いて表面の三次元点群を獲得する.しかし,カメラで観測できる部分しか点群を獲得できず,1度では物体の全周を計測できないので,複数の視点から計測を行う必要がある.こうして得られた複数の部分点群から1つの形状モデルを構築する際,計測時の視点の違いを補正するために,回転+並進で表される剛体変換を部分点群に施す.この処理を位置合わせ,剛体変換を求めることを運動推定と呼ぶ.本研究では,全周点群を獲得するために,複数の部分点群を精度よく位置合わせすることを目的とする. 本研究では,位置合わせの手法の1つとしてICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを用いる.ICPアルゴリズムは,入力として与えられる2つの点群の位置合わせを自動で行う.一方の点群を構成する各点に対し,他方の点群における最近傍点を探索し,これらを仮の対応点とする.このような対応点間の距離を最小化するような剛体変換を推定する.この対応点探索,剛体変換推定を繰り返すことで,2つの点群を位置合わせする運動を推定する. ICPアルゴリズムでは,2つの点群を位置合わせする運動が大きい場合,適切な初期値を設定しないと対応点探索がうまくいかず,運動推定が局所解に陥り不安定になるという問題がある.そのため,本研究では運動する物体に対して連続的に形状計測を行って点群の系列を獲得し,この系列内で隣接する点群に対して位置合わせすることで,運動推定が局所解に陥ることを防ぐ. 複数の点群の位置合わせは,原理的には上述の隣接した2つの点群に対する位置合わせを繰り返し行うことで実現できる.隣接する点群間で推定した剛体変換を積算していくことで,隣接していない2つの点群同士でも位置合わせが可能となる. 本研究では,これを隣接位置合わせと呼ぶ.隣接点群間での運動推定では局所解の問題は起こりにくいが,この推定結果には微小な誤差が残っているため,変換の積算により誤差が蓄積するという問題がある.本研究では位置合わせの順序を工夫し,蓄積した誤差を解消するような位置合わせをさらに行うことで精度の向上を試みる. 本研究では,逐次位置合わせと階層的位置合わせの2つを行う.逐次位置合わせでは,複数ある点群のうち先頭2つの隣接点群にだけICP位置合わせを行ない,位置合わせした2つの点群を1つにまとめる.これにより位置合わせすべき点群の数は1つ減る.このような処理を,全ての点群が位置合わせされるまで繰り返す.この手法では,推定した剛体変換の積算を行わないため,誤差の蓄積は抑えられると考えられる.しかし,位置合わせする点群を構成する点の数は次第に増えていくため,位置合わせにかかる計算時間もそれに従い増えるという問題もある.もう一方の階層的位置合わせでは,複数ある点群を,先頭から順に均等な個数の点群を含むブロックに分ける.各ブロックで,その先頭の点群に位置合わせし,1つの点群にまとめる.このような処理を,点群の個数が一つになるまで階層的に行う. 以上のような位置合わせ手法の精度を定量的に評価するため,本研究では2つの実験を行った.1つめの実験では,ICPによる2つの点群間の運動推定の安定性について,点群間の運動の大きさと位置合わせ精度との関係を分析した. その結果,隣接位置合わせにおいては,点群間の運動の回転成分が1.2°/frameから1.8°/frame程度であれば安定な位置合わせが可能なことを定量的に判断できた. 2つめの実験では,1つ目の実験の結果に基づき,複数点群の位置合わせについて,隣接位置合わせ・逐次位置合わせ・階層的位置合わせの3つの位置合わせ手法を適用し,これらの精度と計算時間について性能比較を行った.複数のICP位置合わせ結果について,その善し悪しを見ためで評価することはできるが,定量的精度評価は容易でない.本研究では,計測物体にマーカを貼付して物体の運動を計測し,これを用いて精度のよい位置合わせを実現する.これとの比較により,ICP位置合わせの精度を定量的に評価する. 以上の実験により,隣接位置合わせを改良した逐次位置合わせ・階層的位置合わせの2つの手法のうち,運動推定の精度のみでは逐次位置合わせが,運動推定の精度・計算時間の両面を含めて考えると階層的位置合わせが優れているという結果が得られた. }