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確信度を用いた特徴選択によるカメラ間人物対応付け

ショッピングモールなどの商業施設において, 人物がどこをどの順に訪れたのかという移動軌跡は施設運営側にとって有益な情報である. 例えば,移動軌跡から人々の移動傾向を分析することで施設内の最適な店舗配置を検討できる. 自動的に移動軌跡を獲得するために様々な手法が考えられるが, カメラで撮影した映像を用いる手法は屋内施設でも利用でき, 防犯カメラ等の既設のカメラの映像を利用できるといった利点がある. そのため,本研究ではカメラで撮影した映像を用いる手法を考える.

カメラで撮影した映像を用いて各人物の移動軌跡を獲得するためには, 異なるカメラ映像から得られる情報を用い, 各カメラで観測された人物と移動軌跡を獲得したい人物の同一性を判定し, カメラ間で同一人物同士を対応付ける必要がある. そこで,本研究ではこの同一人物対応付けを目的とする.

カメラ間の同一人物対応付けは,カメラ映像中の人物領域から抽出した特徴量の比較によって行う. 同一人物からは同じような特徴量が抽出されるので, 特徴量が最も類似する人物を同一人物として対応付ける. 人物領域から抽出できる特徴量には 例えば服の色に注目する色特徴や,服の模様に注目する勾配特徴がある. 各特徴量の抽出や比較にはパラメータが存在しており, パラメータによって特徴量の記述粒度や比較の厳密さを調節できる.

対応付け候補者や,照明やカメラの設置角度といった撮影環境によって, 同一人物対応付けに適した特徴量とパラメータは異なる. 例えば,観測された人々が模様は異なるが配色が似通った服装の場合は, 模様が異なるので勾配特徴を用いると対応付けられるが, 色特徴を用いるならば似た色を微小な相違で区別できるようにパラメータを調節する必要がある. また,カメラ間で観測される人物の向きが大きく異なる場合は, カメラ間で模様が隠れることがあるので勾配特徴では対応付けが困難であるが, 色特徴は観測された人物の向きが異なっても変化は小さいので対応付けできると考えられる. このように,観測された人々や撮影環境に応じて有用な特徴量とパラメータは異なり事前にわからない.

そこで,本研究では確信度によって適切に特徴量とパラメータを選択する手法を提案する. 確信度とは,ある人物と別カメラの映像中のある対応付け候補者の類似度が, そのカメラ映像中の他の対応付け候補者の類似度より相対的にどの程度突出しているのかを示す量である. 異なる人物間の差が埋もれたり, 人物領域の外見変化で大きく変化したりする特徴量やパラメータを用いた場合は, 同一人物間でも異なる人物間でも同じような類似度となる. このとき確信度は小さく,類似度最大の人物が同一人物の可能性は低い. 一方,異なる人物とは類似せず, 人物領域の外見変化であまり変化しない特徴量やパラメータを用いた場合は, 同一人物間でのみ特徴量が類似する. このとき確信度は大きく,類似度最大の人物が同一人物の可能性は高い. 確信度が最大となる特徴量とパラメータを探索し, その特徴量とパラメータを用いて人物を対応付けることで, 観測された人々や撮影環境に応じて特徴量とパラメータを適切に選択した対応付けができる.

確信度によって特徴量とパラメータを選択して用いる提案手法と, 特徴量とパラメータを一つに固定した固定手法で同一人物対応付けの精度を比較する実験を行った. 提案手法で用いる特徴量とパラメータの組は, それぞれパラメータの異なる色ヒストグラムとSIFTによる特徴を計4種類用意した. 固定手法はこれらを単一で用いる. 商業施設の2つの異なるカメラで撮影した映像に各手法を適用した結果, 固定手法では20人中7〜15人が正確に対応付けられた. いずれかの特徴量とパラメータの組で類似度が最大の人物が正解となったのは20人中18人であった. 提案手法ではそれら全てについて確信度により特徴量とパラメータの組を適切に選択することができ,正確に対応付けられた. 以上より,確信度により特徴選択が適切に行え, 単一の特徴量とパラメータの組を用いるよりも対応付けの正確さを向上できることが確認された.

対応付けに誤った2名は確信度の最大値が小さく, 4種類のどの特徴量とパラメータの組を用いても正確には対応付けできなかった. 同一人物は少なくとも類似度の大きい上位数名に含まれているので, 確信度の最大値が小さい場合には複数候補を許すとこれらの人物も対応付けられる. このような場合に対応付けられる人数を極力少なくする手法の検討が必要である. また,特徴量として利用できるものには他にも顔特徴や体格特徴があり, より多くの特徴量とパラメータの組を導入し, 様々な人物や撮影環境で本手法の有効性を評価することが今後の課題である.