内容梗概
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物体形状の知識を利用した視体積における線状部分の欠損の修復


電子博物館では,展示物として 様々な物体の3次元形状を電子的に計算機で獲得することが必要とされている. 昆虫のような線状部分を有する物体の3次元形状もまた 展示物として必要とされている.

物体の3次元形状を獲得する手法として,レーザ光による形状計測やステレオ視, 視体積交差法などが用いられている. レーザ光による形状計測は,黒いカブトムシのようなレーザ光を吸収する物体の形状を 獲得することができない. また,ステレオ視は,画像間で対応点が求められない色特徴に乏しい物体の形状獲得が 困難である. これらの手法に対して,視体積交差法は画像上での物体の存在領域を示す シルエットが得られれば,物体の素材や色特徴によらず, 物体形状を獲得することができる. この視体積交差法の特徴は,電子博物館という様々な物体の3次元形状が 必要となる利用目的に適したものである. これに基づいて,本研究ではこの視体積交差法を用いて, 実在の物体の形状を獲得する.

しかし,視体積交差法は,シルエットのみを用いて形状を獲得する手法であるため, シルエットに欠損が起きると,獲得形状にも欠損が起きてしまうという欠点がある. シルエットは一般的に,物体の前景画像と背景画像の各画素の差分を 計算することで得られるので,物体の色が背景の色と類似したところでは, シルエットが欠損してしまう. このことから,前景画像と背景画像から得たシルエットからだけでは, 欠損のない物体形状を獲得することが困難だといえる. 特にこの欠損が物体の線状部分に起き た場合は,その 欠損により 連結性が失われることが多い. このとき欠損が顕著に 見た目として現れて しまうため, 電子博物館での展示という用途に用いるには好ましくない.

本研究では視体積交差法によって獲得した形状の線状部分に起きた欠損を 修復する手法を提案する. 我々は人間には獲得形状の欠損を認識できることに注目する. 人間が形状の欠損を認識できるのは,人間が物体形状の知識を 持っているからである. この考えに基づいて,撮影画像に加えて 昆虫のような線状部分を有する物体の物体形状の知識を導入し, 物体の線状部分に生じた 欠損を修復する. 昆虫のような線状部分を有する物体を考えた場合, 一つの胴体と細長くかつ直線に近い形状を持つ複数の体節で構成されて いるという知識,および, 物体のそれぞれの体節が一つの連結領域で各体節が接続している という物体形状の知識がいえるので,これらの知識を欠損の修復に利用する.

ただし,これらの物体形状の知識は物体の正確な形状を直接与えるものではない. よって, 何らかの方法を用いて これらの物体形状の知識から形状を獲得する必要がある. 実際の物体形状は,前景画像と背景画像 との差分値という形で観測されているので, 上記の物体形状の知識を制約条件とし,この制約条件を満たす範囲でなるべく 前景画像と背景画像と整合の取れた形状 となるように獲得形状の欠損の修復を行う.

まず,一つ目の物体形状の知識に基づいて昆虫の多関節モデルを作成し, 誤って物体形状ではないところを修復してしまわないように, 多関節モデルによって欠損を修復するかどうかを判定する範囲を限定する. 限定した範囲を修復判定空間とよぶ.

次に, 多関節モデルで限定された領域内で獲得形状の欠損を検出する. 二つ目の物体形状の知識により, 修復判定空間内の獲得形状の連結領域の数を調べることで, 獲得形状の欠損を検出する. 連結領域が複数存在すれば,獲得形状に欠損が起きていると判断する.

最後に,検出した獲得形状の欠損をボクセル単位で修復する. 各ボクセル を各画像に投影した際,画像上のボクセルの投影像での 前景画像と背景画像の差分値が大きいボクセルは物体形状に含まれる可能性が高い といえる. これを踏まえて,なるべく差分値が大きいボクセルを優先して 修復し, 獲得形状が一つの連結領域となるように修復を行う.

実験として実際に昆虫を撮影し,実験を行った. 実験では,視体積交差法で3次元形状獲得を行い,提案手法を用いて視体積交差法で獲得した形状の修復を行った. その結果, 従来の視体積交差法では物体の線状部分で獲得形状が途切れたという欠損が 起こっていたのに対し, 提案手法を用いた結果その欠損が修復され,連結性が保存された形状が獲得され, 提案手法の有効性が確かめられた.


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