内容梗概
[English | 論文 | 美濃研の研究 | 美濃研究室 ]


物体の反射係数獲得のための形状に応じた照明コントロール法


オンラインショッピングを中心に代表される電子商取引において、商品の電子的な展示を行うことを目的として,物体を任意視点から見た画像を生成する技術が要求されている.このような背景の下,任意視点画像を生成するために必要となる物体の3次元形状や物体表面の反射係数を計測する試みがなされている.実物体の3次元形状を獲得することに関しては,レーザレンジファインダを用いた手法やステレオ視,視体積交差法が一般に使われており,計測精度を向上させるための様々な研究がなされている.

一方,反射係数の獲得に関しては,光源の種類・位置・光量によって規定される照明環境と物体の3次元形状を与えれば,複数視点から撮影された複数枚の画像の組から物体表面の反射係数の推定が行えることが示されている.

ここで,反射係数を推定する際に重要となるのが照明環境の設定である.反射係数の推定には,反射光をカメラで撮影した画像を利用する.その際,画像が反射光を正確に反映できていなければ,そのような画像を利用して推定した反射係数にも誤差が生じることになる.画像が反射光を正確に反映できるかどうかは照明環境によって左右される.つまり,画像が反射光を正確に反映できるように照明環境を設定すれば,反射係数が正確に得られる.本研究の目的はなるべく画像が反射光を正確に反映できるような照明環境を決定することである.

物体表面に照射される入射光の光量に偏りが生じると,その偏りは反射光に影響を与え,反射光にも偏りを生じさせる.この反射光の偏りが画像の量子化誤差を増加させることになる.よって,物体表面に照射される入射光の光量に偏りが少なくなるように照明環境を決定すれば,本研究の目的は達成される.

入射光の光量は,光源の位置,光量と,物体表面の位置,法線方向から計算される.つまり,物体形状に応じて最適な照明環境が異なる.従来は,対象物体の形状に関わらず,明確な基準を設けることなく,経験的に光源を均等に配置することで,反射係数の推定を行っていた.それに対し,本研究では物体形状に応じて最適な照明環境を決定する.

提案手法では,様々な形状に応じて適切な照明環境を実現できるように,あらかじめ点光源を大量に配置しておき,そのON/OFFを調節することで様々な照明環境を構築できるようにする.

まず,視体積交差法を用いて,視体積を求め,これを一定の大きさの立方格子(ボクセル)の集合で表現する.この視体積を対象物体の3次元形状とみなす.次に,視体積を構成するボクセルのうち,表面に位置するボクセルを表面ボクセルとして抽出し,各表面ボクセルごとに法線ベクトルを求める.これにより,光源の種類,位置,強さから,各表面ボクセルに照射される光量を計算することができる.各表面ボクセルに照射される光量の分散を最小とする照明環境が求めるべき照明環境である.

ここで生じる問題として,配置した光源台数が多くなってくると,ON/OFFの組合せの数が膨大となってしまうことが挙げられる.そのため,全てのON/OFFの組合せでのばらつきを計算して比較することは,実用的な計算時間の範囲では不可能となってしまう.そこで提案手法では,探索空間を小さくするためにON/OFFを自動的に決定することができる照明を予め抽出し,それを探索対象から除外する処理を行う.

提案手法の有効性を確かめるために,シミュレーション実験を行った.対象物体の形状を複数のカメラを用いて獲得した後,対象物体を中心に大量の光源を均等に配置した状態で実験を行った.均等配置した光源を全てONにした状態では物体表面毎に入射光の光量にばらつきが生じたが,提案手法を用いて決定された照明環境下では,入射光の光量のばらつきが小さくなることが確認され,本手法の有効性が示された.


学位論文のページに戻る