内容梗概
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フットステップデータの収集と多変量解析を用いた個人識別能力の分析


ユビキタスネットワークの発展に向け,様々な機器をネットワークに接続し,ユーザへサービスを提供するための研究が行われている.このようなユビキタス環境ではユーザごとに適応したきめ細かなサービスの提供が望まれており,そのためにユーザの個人識別が必要不可欠となっている.一方,ユビキタス環境における個人識別ではユーザに煩わしさを感じさせないことが望まれている.フットステップデータを用いた個人識別手法はユーザへの負担が少ない手法として期待されている.本研究ではフットステップデータについて基礎的な知見を得ることを目的とする. 現在ユビキタス環境では個人識別手法としてRFIDタグなどの徽章を用いるものや,虹彩,指紋などの個人属性を基に識別するもの,パスワード入力によるものなどが研究,あるいは実用段階にある.しかしながらこれらの手法では物体の携帯や機器の操作が必要であるため,ユーザにとって物理的負担となっている.また,虹彩,指紋を利用した個人識別手法では個人属性の情報を与えるため,プライバシーの観点から心理的負担となっている.それに対し,床に配置した圧力センサの上をユーザが踏み通り抜けることで歩行中の1歩の間に床にかかる力であるフットステップデータを取得し,識別を行う手法はユーザにとって物理的負担,心理的負担が少ないと考えられる. フットステップデータを利用した個人識別に関する先行研究においては個人識別の可能性が示されている.しかしながら,識別に影響を与えると考えられるデータ収集環境や被験者について十分な考察が示されていない.そこで本研究では,まず収集する環境がフットステップデータにどのような影響を与えるかについて調べ,適切なフットステップデータ収集環境を構築する.次に収集されたデータについてその識別能力の検討を行う. 本研究では縦50cm横50cm高さ3cmの台はかりを用いてフットステップデータを収集する.比較する収集環境として,先行研究で行われている2つの状況,

について比較を行う.得られるデータから先行研究に用いられている特徴量を求め,その分布について仮説検定を行った.その結果,この2つの状況で得られるデータの特徴量は異なる分布をしていることが分かった. また台はかりに対する被験者の足の接地位置への意識がデータの特徴量の分布に与える影響を調べる.そのために複数枚の台はかりを利用することで被験者の設置位置への意識を低減させる環境を構築する.次の2つの条件,

で得られるデータについて比較を行う.データから特徴量を求め,その分布について仮説検定を行った.その結果,2つの条件で得られるデータの特徴量は異なる分布をしていることが分かった.これにより計測前後で床の高さが変わらず,被験者が足の接地位置を意識しないフットステップデータ収集環境を構築する必要があることが分かった. この収集環境で得られるフットステップデータの識別能力について調べる.各個人のデータのバラつき方と個人の間のバラつき方を調べるために,まずデータの分散共分散行列を求め,主成分分析により分散について多くの情報を持つ軸を選び出す.そして識別能力について議論するためにフットステップデータの分布を次のように仮定する.

この仮定の下でモンテカルロ法によりユーザのデータの分布を設定する.設定したユーザのもつデータの分布の和領域に対する重複領域の割合より識別能力を評価する.その結果,検出率95%,誤識別率5%で10人程度の個人識別が可能であることが示された. また体重が識別に与える影響を調べるために,体重情報を除いたフットステップデータの識別能力を検討する.その結果,体重情報を除くと誤識別率が大幅に大きくなり,体重がフットステップデータを用いた個人識別において重要な要因となっていることが分かった.しかしながら検出率95%,誤識別率5%で3人程度の個人識別が可能であることも示された.


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