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時系列視体積の統合による3次元復元形状の再現性の向上


実世界に存在する物体の3次元形状を計算機上に取り込むことによって,任意方向からの画像を生成することが容易となる.これは,インターネット上でのコンテンツ作成や,バーチャルリアリティなどの仮想世界上で物体を表示する際に有効となる.このように実世界に存在する物体の3次元形状を計算機上に取り込む技術を3次元形状獲得といい,これにより獲得される形状を復元形状と呼ぶ.

3次元形状復元の手法として,レーザレンジファインダを用いる手法,ステレオ視,視体積交差法などがある.レーザレンジファインダを用いる手法では,レーザを吸収するような表面特性を持つ物体形状は復元できない.また,ステレオ視では物体の色情報を用いるので光学的環境に対するロバスト性が低い.これらの2つの手法と比較して,視体積交差法は物体の表面特性によらず復元形状を獲得でき,光学的環境にもロバストである.そこで本研究では,視体積交差法を用いて実物体の3次元形状を獲得する.

視体積交差法は,複数のカメラで対象となる物体を撮影し,それぞれのシルエット画像から推定される物体存在可能領域を求め,この積領域(視体積)を求めることで3次元形状獲得を行う手法である.一般的に視体積交差法では,視点が多ければ多いほど視体積が物体形状に近づき,再現性の高い復元形状を得ることができる.しかし,視点を増加させることには限りがあり,視点増加による視体積の再現性の向上には限界がある.

そこで本研究では,時系列で得られる視体積を統合することによって,実際に用いたカメラ台数よりも多くの台数のカメラを用いたときと等価な視体積を獲得することで,視体積の再現性の向上を目指す.

物体の剛体運動を知ることにより,後の時刻で得られた視体積を運動前の位置へ変換し,前の時刻の視体積との積領域を取ることで視体積を統合することができる.そこで視体積を統合するために,物体の剛体運動追跡を行う.各時刻の視体積をボクセルデータとして求め,各時刻の視体積から特徴点を抽出し,剛体運動を記述する剛体変換行列を特徴点間の対応から求めることにより視体積を統合する.特徴点として視体積上の突出した部分(突起)を採用した.視体積上で突出している部分は,物体表面上で突出している部分と一致すると予想され,物体とカメラの位置関係によらず安定して抽出されるからである.

突起を二つの性質に基づいて検出する.まず,視体積の境界面の密集度が高いという性質に基づいて検出を行う.あるボクセルに密集する視体積の境界面の数は,そのボクセルの視体積中での突出の度合いを示す.しかし,視線方向が密集するようなカメラ配置を取る場合には,あるボクセルに密集する境界面の数は,そのボクセルの突出の度合いと正確には比例しない.そこで,視線方向が密集するカメラ配置からも適切に特徴点を抽出できるように,視点方向の密集の度合いを計算し,これを基に視体積の境界面に重みづけを行う.視体積の境界面に重みを加えた上で,あるボクセルに密集した境界面の重みの和が閾値以上のものを突起の候補とする.

次に,突起は視体積の細線の方向に沿って進んだ方向に存在するという性質に基づいて検出を行う.細線とは,ボクセルデータから求められる物体の中心を通る幅1の線である.各時刻の視体積から細線を抽出し,さらに木構造を構成して短い枝を取り除く.こうして得られた細線上の各端点でその付近の細線の大局的方向を調べ,特徴点の候補から細線方向に最も進んだ点を抽出し,最終的な特徴点とする.

特徴点間の対応づけは,Powellの収束法を用いて誤差関数を最小化することで行う.移動前の物体から得られる特徴点群にこの剛体変換行列を施した点群が,移動後の物体から得られる特徴点群に一致するように剛体変換行列を求める.誤差関数は両者間の距離の2乗和で求める.

剛体変換行列を求める際,一方の時刻で検出された特徴点がもう一方の時刻で検出されないとき,対応する特徴点が存在しないので誤対応が起きる問題がある.この問題を対処するため,ロバスト推定を用いた.得られる剛体変換行列に影響を与えないよう点群の運動量に閾値を設け,対応づけによってこの閾値を越えて移動した点は誤対応であるとして無視し,剛体変換行列を求める.

実験として,シュミレーションデータを用いて3次元形状の復元とその再現性の検証を行った.実験の結果,物体の突出した部分と一致する視体積上の突起を獲得し,求められた特徴点から剛体変換行列を精度よく推定することができた.また,剛体変換行列を用いて時系列の視体積を統合した結果,各時刻での視体積よりも再現性の高い視体積を得ることができた.


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