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パッチモデルの3次元モーフィングにおける局所的自己交差の回避


本研究では、パッチモデルに対する3次元モーフィングを扱う。パッチモデルと は、物体の表面を多角形の集合により表現したモデルであり、ここでは全ての パッチが三角形から構成されているモデルを用いる。モーフィングとは、モ デル間の変化を連続的に表現するような中間モデルを生成する手法である。本 研究では、成長シミュレーションのような実世界における物体の形状変化の記 述を、モーフィングを用いて実現することを目標とする。

パッチモデルに対するモーフィングの手法は、モーフィングの対象となる2つの モデルの間での頂点の対応付けと、対応付けられた頂点に対する軌跡の生成の2 段階から実現される。前者の問題は困難な問題であり、モーフィングに関する 多くの研究で取り上げられているが、有効で一般的な解法は提案されていない。 後者の問題は実世界で起きている変化を表わす軌跡が生成されることが望まれ、 これを求めるのは困難である。しかし、望ましい軌跡かどうかは分からないが、 線形補間のような単純な手法でも軌跡を生成することはできる。しかし、正し い対応付けを予め得ているとして、単純な方法で軌跡を生成することでモーフィ ングを実現すると、それで記述される変化が実世界で起きている変化と一致し ないことが多い。

実世界で起きている変化と一致しない現象が起こる問題のひとつとして、モー フィングの過程で起こる自己交差が挙げられる。これは、パッチモデルのある 面が他の面と交差して、モデルの一部がモデルの内部に入り込むという、現象 である。物体の実世界における形状変化を表わすためにモーフィングを用いる 場合、生成されうる全ての中間モデルにおいて自己交差が起こらないことが求 められる。近年、モーフィングに関する研究は多く行なわれているが、自己交 差の回避を保証する3次元モーフィングの手法は提案されていない。

予め対応付けをされているパッチモデルのモーフィング過程で発生する自己交差 は、生成された頂点の軌跡が現実の変化を表わす頂点軌跡と異なることによっ て生じるといえる。この原因として、モーフィングにおける頂点軌跡の生成法 に問題がある場合と、現実の頂点軌跡が非常に複雑である場合の2つが考えら れる。本研究では、頂点軌跡の生成法に起因すると考えられる自己交差を、モー フィングで生成された頂点軌跡を修正することで回避することを目標とする。 しかし、検出された自己交差を、その原因によって2つに分類するのは困難であ る。そこで、モデル表面上の近傍で発生する自己交差は頂点軌跡の生成法に起 因すると仮定する。

静止したパッチモデルに対する自己交差の検出は、2つのモデルを対象とした交 差判定の従来法に基づき、モデル中の全ての面と面の交差を判定することで行 われる。3次元モーフィングに対する自己交差の検出は、モーフィングで生成さ れた頂点軌跡からモーフィング過程で自己交差が起こる瞬間、つまり衝突を検 出することに基づいて実現される。モデルにおける衝突は、4つの頂点の接続関 係、位置関係から検出することができる。衝突検出の手続きは面と面の交差判 定手続きを拡張したものである。こうして検出される自己交差のなかで、衝突 に関係する4つの頂点が全て直接接続されているような場所で起こっているもの を局所的自己交差と呼ぶ。

本研究では、局所的自己交差が、モーフィングにおける頂点軌跡の生成法に起 因するものであると仮定し、この回避を行なう手法を提案する。すなわち、検 出された局所的自己交差に対し、衝突に関係する4点のうち、3点の位置関係か ら衝突が起こらない領域を求め、残る1点の頂点軌跡をその領域内で修正するこ とで、局所的自己交差を回避する。また、頂点軌跡の修正による局所的衝突の 回避後、軌跡を修正した頂点の周辺の頂点との間で別の局所的衝突が発生する 可能性があるため、その衝突に対する対処法についても言及する。

提案手法の有効性を示すために、ヒト胎児の成長過程を表わす11体のパッチモ デルを用意し、その中の2体を用いた実験を行った。まず準備として単純な手法 である線形補間を用いてモーフィングを行ない、その過程で発生している自己 交差の検出を行なった。そして、提案手法を適用することで、モーフィングに おける自己交差が多くの場合で解決されたことから、手法の有効性を示した。 また、モーフィングの対象となるパッチモデル間の形状の差異と発生する自己 交差の回数との関係、および提案手法により回避できる自己交差の量との関係 についても考察を行った。


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