内容梗概
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視覚イメージ伝達のための典型的画像集合の対話的探索


近年、マルチメディア技術の進歩に伴い、画像を中心とする多様なメディアが用いられるようになっている。画像を自分のイメージ通りに作成するにはそれなりの作成技術が必要であるが、作成技術を持たない人(「依頼者」と呼ぶ)はその作成をデザイナーに依頼する。この際依頼者は、デザイナーに作成して欲しい画像に対するイメージを正しく伝達する必要がある。本研究では、このような依頼者のイメージの中で、依頼者の頭の中に、希望する画像のはっきりしたイメージ(「視覚イメージ」と呼ぶ)が存在する場合を考える。視覚イメージには、希望する画像の具体像に関する情報が含まれているが、それが画像を一意に決定出来るほど十分なものではなく、ある程度許容範囲を持っている場合も多い。

この視覚イメージを伝達する際、依頼者は通常言葉を用いるが、言葉によって視覚イメージを一度に正確に伝える事は難しいため、デザイナーが画像を試作し、これが依頼者のイメージに適合するかどうかを、対話を繰り返すことにより確認し、異なる部分を修正する事を繰り返さなければならない。このため、依頼者の希望する画像が完成するまでに多くの時間を必要とする。

加えて今日、インターネットの普及に伴い、依頼者がデザイナーにネットワークを介して直接コンテンツの作成を依頼する状況も現実的になりつつある。インターネットでは、多様なメディアを介したコミュニケーションが可能であるが、対面式のコミュニケーションに比べ対話性が低く、言葉により視覚イメージを伝達する困難さを、頻繁なインタラクションにより解決することは難しい。

少ない対話で視覚イメージを正しく伝達するために、本研究では言葉に加えて、視覚イメージの表現により近い事例画像を用いることを考える。この際、依頼者が画像作成技術を持たないことを考慮し、データベースとして蓄積されている既存の画像の画像物体領域(「オブジェクト」と呼ぶ)を組み合わせ、その中から視覚イメージに一致するものを選択する事により、依頼者が事例画像を獲得できるようにした。

事例画像は、言葉に比べ視覚イメージを表現する際の具体性が高い事が利点であるが、その具体性の高さから、事例画像の枚数が少なすぎたり、また互いに類似したものが多いと、依頼者の視覚イメージの一部分しか伝達できないという状況が生じる。そこで本研究では、事例画像として、依頼者のイメージに適合し、かつ多様な画像集合を獲得する方法を提案する。このような画像集合を本研究では「典型的画像集合」と呼ぶ。

ここで、画像特徴パラメータを軸とした画像特徴空間を考えると、依頼者のイメージの許容範囲は、この空間上である範囲を占めると考えられる。したがって、この範囲に含まれる画像の中から、互いに類似しない多様な画像を選択し、これらを典型的画像として用いることにより、依頼者の視覚イメージの伝達が出来ると考える。本研究では、このような画像集合を獲得する手法を提案する。

本手法では、まず、依頼者役の被験者(「送信者」と呼ぶ)に自分の視覚イメージを略図(「クエリ」と呼ぶ)で表現してもらう。このクエリに対して、クエリを構成する各物体領域(「パーツ」と呼ぶ)を、オブジェクトで置き換えることにより様々な画像を探索、生成して送信者に提示し、イメージの範囲に含まれているか判定してもらい、含まれていれば正事例、そうでなければ負事例とする。このような画像の探索の際、各パーツと、置き換えるオブジェクトの色特徴、形状特徴を評価し、それらに基づく画像全体の評価が、クエリや既に送信者に判定された正事例と近く、負事例とは異なるもので、なるべく多様性の大きいものを選択する。送信者の判定を基にオブジェクトの組み合わせに対する評価が更新され、評価の高いものが再び送信者に提示される。これを繰り返す事により典型的画像が獲得される。

以上のシステムを用いて、送信者とデザイナー役の被験者(「受信者」と呼ぶ)に対して、本システムを用いて獲得した典型的画像を用いることによって、視覚イメージの伝達される能率が、どのように変化するかを調べる実験を、言葉のみで視覚イメージを伝達した場合、並びに送信者の描いたクエリを用いて伝達した場合と比較することにより行った。

その結果、まず言葉を単独で用いた場合から、言葉から解釈されるイメージの範囲に個人差があり、この範囲が狭い受信者には、送信者の視覚イメージのうち限定された範囲だけが正しく伝わる事がわかった。次に、クエリを加えて伝達することにより、送信者のイメージのうち限定された範囲だけが正しく伝達される事がわかった。最後に、互いに類似した画像を典型的画像として用いると、その似た画像の枚数の大小により、受信者は枚数の少ない典型的画像を、典型的画像として見なさなくなる事がわかった。


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