内容梗概
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インターネットにおけるMPEG2ストリームの優先度に基づく動的帯域制御方式


本稿では、インターネットを経由して映像及び音声を伝送する際に発生する、パケットロスとジッタの影響を抑えるための、データの優先度及びネットワークの状況の両者に基づく動的帯域制御方式について提案する。

ネットワークの広帯域化にともない、インターネットで映像や音声のようなストリームデータを伝送する機会が増えてきている。そのようなストリームデータを伝送するためのフォーマットとしてMPEG2があるが、伝送帯域が数Mbps〜数10Mbpsにも及ぶMPEG2ストリームを伝送できるようになれば、放送並みの品質の映像や音声をインターネットを通してやりとりできる。京都大学でも、昨年度からアメリカの大学との間で、MPEG2ストリームをインターネットを通して伝送する方式を用いて、双方向の遠隔講義を行っている。

映像と音声を双方向で伝送し、密なインタラクションをとろうとする場合、このストリームデータは遅延の小さいリアルタイム性を持っていることが重要である。

さまざまな伝送データが限られた帯域を共有するインターネット上では、ストリーム伝送に利用できる帯域が時間とともに常に変動する。そのため、大きな帯域のデータが流入し輻輳が発生すると、しばしば遅延やパケットロスが生じ、それによって映像や音声が乱れ、講師や受講者に不快を与えたり、伝送されるべき情報が欠落する。

このため、インターネットを用いた映像や音声の伝送において、映像や音声の乱れを抑えることが必要となる。そのような乱れを抑えるために、たとえば、ストリームデータの中でも重要と思われるデータに優先度をつけ、これらのデータがロスしないように、ネットワーク上で制御をする方法が考えられるが、現状において、インターネットで用いられているほとんどのルータでは、データの優先度を考慮した処理が行われていない。

そこで本稿では、送信側と受信側の両端で優先度に基づく制御を行い、映像や音声を構成するデータの中でも重要なものを確実に伝送する手法を提案する。

MPEG2ストリームは送信時に、いくつかのパケットに分割されて伝送される。各々のパケットが、MPEG2ストリームのどの部分に相当するかによって、そのパケットがどのぐらい重要なものであるかを判別する。MPEG2ストリームにおいて重要なデータとしては、映像と音声の同期を取る情報を含んでいるヘッダを含むもの、データの中身が映像か音声かを示すようなヘッダを含むもの、他のピクチャを参照しないIピクチャ、音声といったものがあげられる。送信するパケットに対して、その中に含まれるデータの重要度に基づいた優先度をつけ、優先度の高いパケットを冗長化して送信することで、重要なデータが伝送時にロスする確率を下げる。

一方、冗長化による伝送帯域の増加がもとで、ネットワークに輻輳を発生させてしまう場合もある。そのため、受信側はパケットロスの状況を常に調べ、重要なデータを含むパケットを冗長化すべきかどうかを送信側にフィードバックする。送信側はこのフィードバックにしたがって、重要なデータを冗長化するかどうかを決定する。また、受信側で測定したパケットロスの割合が大きい場合は、同様に送信側にフィードバックを送り、送信側は優先度の低いパケットの一部を送信しないことによって伝送帯域を下げ、ネットワークの輻輳を防ぐ。

さらに、ストリームデータを伝送する場合、伝送経路上で発生する大きなジッタの影響を抑えることも必要である。これに関しては、受信側でいったん受信データをバッファに蓄積してジッタの影響を減ずるとともに、送信帯域の調節も行い、輻輳発生を防ぐ。

以上の手法の有効性を示すために、ネットワーク上でのパケットロスの割合をさまざまに変化できるシミュレーション環境を構築し、ストリームデータの伝送実験を行った。その結果、重要なデータを含むパケットのロスの割合が低くなることが示された。


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