内容梗概
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複数の画像を事例として用いたデザインイメージの伝達手法


本研究では、教材などに用いる画像コンテンツの作成において、コンテンツの作成依頼者であるクライアントから、実際にコンテンツを作成するデザイナーに対して、そのクライアントの持つイメージの範囲を的確に伝えるために、既存の画像を合成して作成した複数の事例を用いる手法を提案する。

近年のマルチメディア技術の進歩により、画像コンテンツを豊富に用いた視覚的なコンテンツが多用されるようになってきた。 %必要とされているものしかし、クライアントは描画技術を持たない場合が多いため、デザイナーにコンテンツを作成依頼する場合が多い。この際、クライアントは通常言葉などによって自分のイメージをデザイナーに伝達するが、言葉と画像ではメディアが異なり、両者の対応関係に曖昧さが大きいため、デザイナーがクライアントのイメージにあったコンテンツを作成するには、コンテンツを試作してクライアントに提示し、これに対するクライアントのコメントに基づいて修正を加える、というプロセスを繰り返さなければならない。

この過程を効率化するには、イメージ伝達の手段として画像コンテンツと同じメディアである画像を用いることが望ましい。この際、クライアントのイメージにある程度の範囲がある場合、これを一枚のみで正しく伝達することのできる画像を見つけるのは非常に困難である。そこで本研究では、このような、ある程度の範囲のあるイメージを複数の画像を用いて伝達する。

ここで、画像コンテンツの持つ画像特徴パラメータを軸とした画像空間を考えると、クライアントのデザインイメージは、この画像空間中のある領域を占めると考えられる。そこで、この領域内に散在する複数の画像を、画像データベースから検索し、これらをクライアントのデザインイメージの事例としてデザイナーに伝達することを考える。

このような事例の検索において、まず、クライアントは自分のイメージの範囲を明確に把握していない場合が多いため、この範囲を画像空間中で探索する必要がある。また、なるべく少数の事例によってイメージの範囲を的確に伝えるには、探索された範囲に含まれていて、かつ一点に集中していないような、互いになるべく異なる複数の画像を事例として選ぶ必要がある。さらに、このような事例として適した画像が画像データベース中に存在しない可能性もあるため、データベース中の各画像中の個々の物体に対応する領域 (本稿ではこれを「オブジェクト」と呼ぶ)を組み合わせることによって、必要な画像を生成するという処理が必要となる。

本研究では以上の処理を実現するシステムを構築した。画像コンテンツのデザインイメージには、画像全体から受ける印象のように、抽象度の高いものから、色や形、レイアウトといった、画像自体の持つ特徴に直接関連したものまで、様々なレベルのものが考えられるが、本システムでは、デザイナーによる画像コンテンツの作成という目的から、後者のレベルのものに焦点を当て、その中でも特に色特徴に基づく処理について考える。

本システムでは、まず初めに、クライアントに自分のイメージの略図(「クエリ」と呼ぶ)を描いてもらう。システムはクエリを構成する各領域(「コンポーネント」と呼ぶ)ごとに、画像データベース中の全てのオブジェクトを、色ヒストグラム特徴に基づいて近いものから順にクライアントに提示し、イメージの範囲に含まれているかを判定してもらうことにより、各コンポーネントの候補となるオブジェクトの集合を得る。

さらに、これらのオブジェクトを組み合わせて合成した画像をクライアントに示し、その画像が画像全体としてクライアントのイメージに含まれるかどうかを判定してもらう。システムはこの判定を基に、次にクライアントに提示する画像を生成するためのオブジェクトの組み合わせを選択する。これを繰り返すことにより、システムは、クライアントのイメージの範囲に含まれていて、かつ画像的になるべく異なった複数の事例を生成する。

以上のシステムを用いて、クライアント役の被験者Aと、デザイナー役の被験者Bに対して、本システムで焦点を当てているような色特徴との関連の深いイメージの情報が、本システムを用いて生成された複数の画像を用いて伝達できるかどうかを調べる実験を行った。

その結果、予め用意したテスト用画像集合に対して、被験者A、Bそれぞれがイメージに含まれると判断した画像の一致の割合は、イメージ伝達がなされないときに比べ向上することが確認できた。


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