内容梗概
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パン・チルトスピード及びズーム制御による動物体の自動撮影手法


ビデオカメラの普及により、多くの人々に物体を撮影する機会が与えられるようになってきた。撮影対象となるコンテンツは、講演会、舞台、スポーツなど、様々なものが考えられる。動物体の移動中の細かな動作が分かる映像を撮影することができれば、撮影された映像を見て後に様々に活用することができる。例えば、舞台やスポーツでは、自分自身が撮影された映像を見て、自分の動作を確認することができる。また、ほかの人を撮影した映像を見て、お手本として活用したり、スポーツでは、対戦するための作戦を立てるのに役立てることができる。

動物体の移動中の細かな動作が分かる映像とは、画像平面内での動物体の位置の変化が小さく、動物体全体が大きく、一定の大きさに映っていて、空間内での動物体の移動速度が把握できる映像であると考える。その理由は、画像平面内で動物体が静止していれば動物体の細かな動作が分かりやすいし、画像平面内で動物体が大きく映っていると動物体の細かな動作が分かりやすいからである。また、動物体が空間中を移動していることが分かると、その空間内での移動が理解しやすいからである。しかし、動物体の移動中の細かな動作が分かる映像の撮影では、動物体を大きく撮影すると、動物体が移動したときに動物体が画像平面内から外れやすくなってしまう。本稿では、この問題を解決し、動物体の移動中の細かな動作が分かるような映像を自動的に撮影する手法を提案する。ここで、動物体は平面内を移動し、動物体の大きさは既知、位置・速度は未知、個数は1つとする。

動物体の移動中の細かな動作が分かる映像を見る側での観点て言いなおすと、動物体の位置の変化を小さくするということは、画像平面内での見かけの位置を指定した位置に維持し、さらに見かけの速度を小さくすることである。動物体全体が大きく、一定の大きさに映っているということは、画像平面内での動物体の見かけの大きさを大きくかつ一定にすることである。動物体の速度が分かるということは、画像平面内での背景の見かけの速度が一定値以下になるようにすることである。

画像平面内での見かけの位置・速度に関してはカメラのパン・チルト角速度を、見かけの大きさに関してはカメラのズーム値を制御することになる。ゆえに本研究では、画像平面内での動物体の見かけの速度とカメラのパン・チルト角速度の関係、画像平面内での動物体の大きさとカメラのズーム値の関係、画像平面内での背景の見かけの速度とカメラのパン・チルト角速度、ズーム値の関係を実時間拘束のもとで解き、実際にカメラを制御して動物体を撮影する。動物体の位置・速度は一定であるとは限らないから、パン・チルト角速度やズーム値は様々な値に変化する。

本研究では、カメラを観測用と撮影用に別々に用意し、次の手順で動物体の自動撮影を行う。観測用カメラの動物体をとらえた画像を処理し、空間内での動物体の位置を観測する。その位置観測結果をもとに、観測時刻以降の動物体の位置・速度を予測する。予測された空間内の動物体の位置・速度に合わせて撮影用カメラの制御方法を決定し、動物体の自動撮影を行う。

特に本研究では、動物体の自動撮影を行うときに発生する以下の2つの制約を克服する方法について焦点を当てる。1つ目の制約は、観測時刻と動物体の位置が得られる時刻にはディレイが発生し、かつ、あるサンプリング間隔でしか観測結果が得られないことである。2つ目の制約は、使用機器に関するもので、撮影時のカメラの制御において、カメラのパン・チルト角速度及びズーム値を離散値で決定しなければならないことである。

本稿では、これらの制約のもとで、次の3つの課題を達成するようなパン・チルト角速度・ズーム値を決定する手法を提案し、同時にその制御命令の実行スケジュールについても言及する。3つの課題とは、画像平面内での動物体の見かけの位置が指定した位置の近傍を維持し、かつ見かけの速度が小さくなるようにする課題、動物体全体が大きく一定の大きさに映るようにする課題、そして、画像平面内での背景の見かけの速度が一定値以下になるようにする課題の3つである。

本手法の有効性を示すために、パン・チルト・ズーム値を制御可能な撮影用カメラを用いて位置・速度が未知である人間の自動撮影を行った。その結果、本手法では上記の3つの課題のすべてを達成することができることを示した。


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