内容梗概
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複数のカメラを用いたマルチユーザに対する講義の実時間映像化法


講義に遠隔地から参加することが、計算機の高性能化のおかげで可能となっている。遠隔地から講義に参加するためには、映像が必要となる。多くの人が講義に参加する遠隔講義では、それぞれの人に適した映像を提供することが重要になってくる。

本稿では、講義を映像化する際に、講義室に設置された複数のカメラを用いて、複数のユーザがそれぞれ望む映像を提供する手法を提案する。

従来、講義のようなイベントを映像化するために、ディレクタやカメラマンは、平均的なユーザが望む映像を想定して、カメラの制御や映像の切り替えを行なってきた。本研究では、各ユーザの望みを反映させたディレクタ、カメラマンを計算機上で実現し、各ユーザが望む映像を提供する方法を提案する。

複数のユーザを想定した映像化法として次の手順を考える。ディレクタが講義の状況を把握し、その状況と各ユーザの望みにしたがってカメラマンに撮影対象などを指示したり、映像を切り替えたりする。カメラマンはディレクタの指示に応じて、撮影対象を観測しながら撮影を行なう。ここで、ディレクタの指示の内容がカメラワークとして映像化の単位となる。

このような映像化の手順を複数のカメラを用いて実現するとき、2つの問題が起きる。

1つ目の問題点は、全てのユーザの望みを満たすことができないことである。講義の状況に応じて、幾種類かのカメラワークがユーザの望みとして出てくる。ところが、一般に1台のカメラにつき1つのカメラワークしか実現できないので、カメラワーク数に対してカメラ数が足りない場合、すべてユーザの望みを満たすことはできない。そこで、出来る限り多くのユーザの望みを満たすカメラワークの組み合わせを求める方法を提案する。これをカメラワークの調停と呼ぶ。

2つ目の問題点は、映像を切り替えるときの映像の不連続性である。カメラワークの調停により求められたカメラワークに応じて、ユーザに映像を提供するカメラが変わる。このとき、ユーザの見ている映像が急激に変化し、ユーザがどのカメラから、どの撮影対象を見ているかを認識できなくなる可能性がある。そのため、急激な映像変化は抑制されなければならない。そこで、映像間の距離を定義して、複数の映像の切り替え経路のうちで、映像の切り替え時の映像間の距離が最も小さい切り替え経路を選択する スムーズな映像の切り替えの方法を提案する。

カメラワークの調停 スムーズな映像の切り替えの有効性を実験およびアンケートにより実証した。 カメラワークの調停の実験では、4台のカメラを用いて、16人のユーザに対して講義の映像を8分間提供した。そのとき、最大で11.3人の望みを満たすはずであるのに対して、本手法は10.3人の望みを満たした。また、講義の状態が変化してからカメラワークの組み合わせを求めるのにかかる時間は、最適手法が1.0秒かかるのに対して、本手法は 秒であった。よって、本手法が実時間でほぼ最適解を求めることを示した。

スムーズな映像の切り替えは、2つの映像の切り替え方のうちどちらの切り替え方がスムーズかというアンケート6組を9人のユーザに行った。その結果、本稿で定義した映像間の距離に基づいた選択と同じ選択をするユーザの割合が、72.2%となった。また、映像の切り替えにユーザの嗜好が含まれることが分かった。


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