内容梗概
[English | 論文 | 美濃研の研究 | 美濃研究室 ]


点の対応に基づく3次元形状の類似度尺度


本論文では、2つの人体形状モデルが与えられたとき、モデル間で点の対応付けを行う手法を提案する。

レンジファインダ等の3次元形状計測装置によって、人体などの物体の形状を3次元データとして計算機に容易に取り込むことができるようになった。主にアパレル関連の分野において、マルチン計測法等を用いてこれまで人手により行われていた人体計測を、人体の3次元データを用いて自動化することが求められており、いくつかの研究がなされている。しかし、従来研究においては、計測点を人手によって指定しており、計測者や被計測者に負担をかけるという欠点がある。

そこで、計測点を、人体の3次元データから自動的に抽出することが望まれる。しかし、計測点は必ずしも形状が特徴的な点ではなく、骨格をもとに定められていて人間が触れなければわからないような計測点も多数ある。よって、形状から計測点を直接求めることは困難である。

本論文では計測点の抽出を、人体の標準モデルを導入し、形状の特徴的な点を利用することにより実現する。まず、あらかじめ計測点の位置の情報をもつ標準モデルを用意する。そして、形状の特徴的な点を利用して、標準モデル上の点と、3次元データから作成した計測対象モデル上の点の対応を求める。このとき、標準モデル上の計測点に対応する計測対象モデル上の点を、計測対象モデルの計測点とする。結局、2つの人体形状モデルが与えられたとき、この2つのモデル間でモデル上の点の対応を求めることが最も大きな課題となる。

本研究では、人体形状モデルの姿勢は直立姿勢とする。また、位置や向きは、計測時に得られるものとする。人体形状モデルの表現形式はパッチモデルとし、2つの人体形状モデル間の点の対応は、パッチモデルの頂点間の対応で表す。

2つの人体形状モデルの間で頂点の対応付けを行うには、各個人の体型に依存する局所的な形状の特徴ではなく、人体に共通な大局的な特徴を抽出する必要がある。人体表面の大局的な凹凸は、個人の体型によらずほとんどの人体に共通しているので、形状の特徴として人体表面の凹凸を利用する。

まず、局所的な凹凸を除いて大局的な凹凸だけを残すために、モデルの表面を平滑化する。このとき、平滑化が進むにつれて新たな凹凸が生成されず、大局的な凹凸だけが残っていくことが求められる。ここでは、曲率フローを用いてモデルの表面を平滑化する。曲率フローにおける平滑化の程度をスケールと呼び、値が大きいほどなめらかなことを表す。各凹凸は、平滑化の過程において、それぞれ凹凸が最もよく現れるスケールが異なる。そこで、平滑化によって数段階のスケールのモデルを生成し、最適なスケールで対応付けできるようにする。

次に、各スケールのモデルごとに、それぞれの頂点において人体表面の曲率を用いた特徴量を求め、モデル上の頂点の中から特徴点を抽出する。そして、抽出された特徴点どうしの対応付けを、スケールの大きいモデルから優先して行う。まずスケールの大きいモデルから抽出した大局的な特徴点の対応付けを行い、順次スケールの小さいモデルから抽出した特徴点の対応付けを行う。この際に、より大きなスケールですでに対応付けされた結果を利用することで、より良い対応付けが得られる。

最後に、得られた特徴点の対応をもとに補間することにより、特徴点以外の頂点の対応付けを行う。これにより、標準モデル上の頂点が計測対象モデル上のどの頂点に対応するかを求める。

本稿で提案した手法について、3次元形状計測装置を用いて得られたデータから作成した人体形状モデルを用いて実験を行った。平滑化の手法として、単にある頂点とその隣接頂点の座標を平均することによる平滑化(単純平滑化)と、曲率フローによる平滑化を比較した。その結果、単純平滑化では、平滑化が進んだとき新しい特徴点が生じるのに対して、曲率フローによる平滑化では、大局的な特徴を残して平滑化できることがわかった。さらに得られた頂点の対応の評価を行うために、人体の自動計測を行った。そして、本手法による計測の誤差と、専門家による計測の誤差と比較した。この結果、本手法による自動計測は、専門家による計測と近い精度を持つことがわかった。これにより、本手法の有効性が示せた。


学位論文のページに戻る