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医学教育用解説図の差分特徴に基づく関連付け


本研究では、医学教育用解説図の視覚的な相違と教材の説明目的の相関性に着目し、説明目的に基づいて教材間の関連付けを行う手法を提案する。

近年、教育の分野では、訴求力や視認性の向上への期待から 教材のマルチメディア化への要求が強い。教材のマルチメディア化により、 文章や図表、写真の他に、 音声や動画など、より多彩で豊富なメディアを組み合わせて利用できるようになるため、 より理解しやすい教材ができることが期待されている。

このようなマルチメディア教材を作成する際には、 説明目的に即して素材を収集し組み合わせる必要がある。大量の素材の中から適切なものを探し出す作業を自動化するには、 個々の素材の意味する内容に基づいてそれらを予め構造化しておく必要がある。

しかし、ピクセルの配列で表現されている画像データの場合、 計算機がそれだけの情報から意味内容を理解し、分類や検索を行うことは困難である。

これまでに提案されてきた、 画像の内容に基づく検索の手法としては、 画像の表現する物体の種類や名称などを属性として与える手法や、ピクセルデータの解析によって得られる、画像の形状や色などの 情報を属性として用いる手法があるが、いずれも個々の画像固有の属性を記述するのみである。

実際は、素材の意味内容は 個々の固有の属性だけではなく、 他の素材との間の文脈的な関係によって決定される。また、人間がある事柄の説明のために複数の素材を組み合わせて 提示する場合は、説明目的に即して素材の組み合わせを決定する。このとき、説明目的をより明確に表現するために、 それぞれの素材の持つ意味の違いを、意図的に素材の視覚的な特徴の違いに表す場合が多いと考えられる。

そこで本研究では、 医学教育用教材を対象として、 同じ教材中の複数の素材に関する視覚的な相違の特徴を、教材が意図する意味内容を知る手掛かりとして利用し、 これに基づき教材間、及び教材中での素材間の意味的関連を求めることを試みる。

医学教育では、 人体をありとあらゆる角度から精密に解析し説明するために、素材として大量の解説図を必要とする。 ここでは、同じ解説図が 目的の異なる複数の教材で利用される場合が多い。

これらの解説図では、各部分に対して 名称や役割を指示する文字列が書かれており、同じ教材内で複数の素材に同じ文字列を付与することにより 素材同士の対応関係が示されていることが多い。

そこで本研究では、医学教育用教材に用いる 複数の解説図について、そのうち任意の2つ解説図の対応関係を文字列による対応関係から導き出し、 解説図の文字列の指し示す位置や色、 図の大きさの差と対応する文字列の組の数を差分特徴ベクトルとして表現することによって、 教材同士を、その説明目的に基づいて関連付けることを提案する。

差分特徴ベクトルは2つの解説図の関係を特徴化したものであり、 解説図ペアの説明目的と少なからず相関性がある。そこで、 解説図ペアを、差分特徴ベクトルに基づいて 3次元空間上に配置することによって、解説図ペア同士の関連性を3次元空間上の距離として表現する。

このような 差分特徴ベクトルが教材同士の関連付けに有効であることを示すため、医学教育用の解説図を用いて 差分特徴ベクトルと教材の説明目的の相関性を確認する実験を行った。

その結果、差分特徴ベクトルと説明目的の相関性は確認できたが、 教材の説明目的に対応する差分特徴ベクトルの分布状況にはある程度の曖昧さがあり、 解説図ペア間の説明目的に基づいた関連付けは、あまり明確には行なえない。このため、前述の3次元空間による表現によって 視覚的に明確な関連を得るのは難しいということが判明した。


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