内容梗概
[English | 論文 | 美濃研の研究 | 美濃研究室 ]


特徴点の逐次選択による複数台カメラの位置推定


仮想現実等のためのCG技術では、ユーザに現実感を与えるために、正確な空間の再構成が必要である。空間の再構成において重要になるのが、複数台のカメラの位置情報である。複数台カメラの位置推定手法には、因子分解法が一般的である。この手法では、空間上にいくつかの特徴点を用意し、それらを各カメラに投影した投影点をカメラ画像から抽出し、同じ特徴点の投影点同士を対応付けて組にした投影点組を用いる。つまり、カメラ位置推定には、特徴点の投影点組の獲得とそれらを用いた位置推定計算の2処理が必要である。

因子分解法を拡張した手法がいくつか提案されているが、特徴点の獲得法については言及せず、位置推定計算法に重点を置くものが多い。本稿では、特徴点の獲得と位置推定計算を一続きの位置推定処理として考え、特徴点の獲得時の情報を位置推定計算に反映させることで、処理を自動化し、精度良くかつ効率的にカメラ位置推定を行う手法を提案する。

位置推定処理では、以下の3点を考慮する。1つは、任意のカメラ配置に対する、各投影点の全カメラ画像上での自動的な抽出と対応付けの実現である。もう1つは、特徴点をいくつ獲得すれば十分な精度で位置推定計算が行えるかを考え、必要以上の獲得処理回数の抑制と、処理時間の削減を目指す。3つ目は、特徴点獲得時の誤差の影響を除去して位置推定結果の精度を上げる方法の実現である。

特徴点の投影点抽出と対応付けの自動化のために、基準物体として球体を用いる。この基準物体を全カメラの視野空間内に任意に配置し、それを観測した各カメラ画像に対して背景差分やハフ変換等の画像処理を行い投影円領域を抽出する。この円の中心を球体の中心の投影点と見なすことで、特徴点の投影点の自動抽出と対応付けを行う。また、基準物体を手動で移動させ、一定時間おきに全カメラで観測することで、任意の個数の特徴点を逐次的に獲得する。

獲得する特徴点の個数を抑制するために、まず基準物体を任意に移動させて特徴点を何点かづつ増加させて行き、それに伴って繰り返し位置推定計算を行う。これにより、特徴点の増加につれて位置推定解が真の解に近づいていくので、最終的に位置推定解の変化が収束した時点で十分な精度が得られたとし、位置推定処理を終了する。特徴点の逐次獲得において、何点獲得した時点で位置推定計算を行うかは、総計算時間と獲得する特徴点の個数から最適な値を決定する。

特徴点獲得時の誤差の影響を除去するためには、誤差モデルを考え、これに基づいて特徴点の信頼度を定義する。この信頼度に基づいて、位置推定計算を行う前に使用する特徴点を取捨選択することで、大きい抽出誤差を含む特徴点は計算に用いないようにする。位置推定計算は特徴点獲得とともに逐次的に行われるので、信頼度は、前回の推定結果を用いて計算されるエピポーラ誤差をもとに決定する。この信頼度に基づく特徴点選択方法はいくつか考えられるが、誤差モデルから考察して、信頼度の高い一定個数を位置推定計算に用いることを提案する。用いる特徴点の個数は簡単なシミュレーション実験から決定する。

獲得された特徴点からの位置推定計算には、因子分解法を透視投影モデルへ拡張した奥行推定因子分解法を用いる。また、基準物体として用いる球体の半径を予め測定しておくことで、カメラ画像上の投影円の半径から平行移動のスケールも同時に推定する。

提案した手法の有効性を確認するために、シミュレーションデータ、実データ両方で実験を行った。シミュレーションデータによる実験では、4台のカメラを配置し、空間内に特徴点があるものとして、それらの投影点座標に誤差モデルに基づく誤差を与えて、位置推定を行った。また、実データによる実験では、基準物体として直径20cm程度のボールを用いて、ある講義室の4隅に配置された4台のカメラでそれを観測することで位置推定を行った。両実験とも、特徴点の逐次選択によって推定解に対する平均エピポーラ誤差が減少して行くことが確認された。実データの実験では5回位置推定計算を繰り返すと、推定解の平均エピポーラ誤差がサブピクセルの値まで収束した。本実験により、本稿のカメラ位置推定手法の有効性が確認された。


学位論文のページに戻る