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部分計測データへの標準モデルのあてはめによる人体形状モデルの生成


レンジセンサで人体を計測して得られる部分的な計測データへ人体の標準モデルをあてはめて変形することで、全身の人体形状モデルを生成する手法について述べる。

レンジセンサの普及により、個人の計測データを得ることが容易になりつつある。個人の形状モデルの作成は、身体形状の解析、仮想現実空間の構築など、さまざまな分野で必要とされている。実物体をレンジセンサで計測し、得られるデータを統合することで形状モデルを作成する手法はこれまでにも提案されいる。これらの手法では、計測対象の全ての形状を欠損なく計測できることが前提となる。人体の場合は、顎下、腋下、股下などはオクルージョンで、また、頭頂部は光が反射しにくいので計測することは難しい。よって、計測データは部分的となり、これらを統合するだけでは全身の形状モデルを作成することはできない。

そこで本手法では、あらかじめ人体の標準モデルを用意し、部分的な計測データに応じて標準モデルを変形することで、計測する個人の全身の形状モデルを得る。計測が困難な部分については、標準モデルからその形状を推定する。本研究では、計測対象を個人の直立姿勢に限定して、個人の形状モデルを生成する。個人間のおおまかな体型差は部位の長さと太さで表わされるとし、体型差を表すために必要な部位(肩、胸、両腕、腰、両脚の合計7個)に標準モデルを切り分ける。これらの各部位の断面形状は個人間で相似であるとし、標準モデルを部位ごとに変形する。

個人の形状モデルの生成処理は、(i)部分計測データと標準モデルの位置関係の特定と、(ii)求めた位置関係に基づく標準モデルの変形とで構成する。(i)については、部分計測データと標準モデルの対応点をマニュアルで与え、この対応点から位置関係を求める。(ii)の標準モデルの変形については、部分計測データから個人のおおまかな体型を推定する相似変形と、部分計測データの形状と標準モデルの局所的な形状を一致させる局所変形とに分解する。

相似変形では、まず、標準モデルと部分計測データの主軸方向の大きさを合わせる。通常レンジセンサで計測する際にはキャリブレーションを行うので、計測された物体の大きさは既知である。そこで部分計測データの大きさに標準モデルを合わせる。計測データが存在する部位については、部位の主軸の長さを計測データから求める。計測データが存在しない部位については、計測データが存在する部位で求めた主軸の長さを平均して主軸の長さを求める。次に、主軸に対して垂直な方向に相似変形を行う。計測データが存在する部位については、部分計測データと標準モデルをそれぞれの主軸が一致するように位置を合わせる。そして、標準モデルと部分計測データの位置関係から、計測した個人の体型を推定する。例えば、標準モデルに対して部分計測データが外側にある場合は、計測した個人は太身であると推定する。この推定に基づき各部位ごとに相似変形を行い、個人のおおまかな形状モデルを得る。計測データが存在しない部位については、求めた相似比を平均して変形する。

局所変形では、標準モデルと部分計測データの対応する部分において、形状が一致するように標準モデルを変形する。しかし、部分計測データに形状を合わせることで、標準モデルの形状は、部分計測データが存在する部分と存在しない部分の境界で表面の滑らかさを失う。そこで、境界付近からの距離に応じた変形を行い、滑らかさを保存する。

相似変形と局所変形においては、人体の対称性を考慮する。部分計測データが入力された部位と対称な部位がある場合、部分計測データと対称な部分の形状を推定して変形する。

以上の手法で個人の形状モデルを生成する実験を行った。実験では、実測データから既に作成された二つの人体形状モデルを用いた。このうち片方の形状モデルを目標モデルとし、残りの形状モデルを標準モデルとした。部分計測データは目標モデルの一部分を切り出して模擬的に作成した。そして、標準モデルを部分計測データにあてはめて生成した形状モデルと目標モデルの誤差を計算することで手法の評価を行った。この結果、計測データの存在しない部分の形状を推定することができ、局所的に個人と同じ形状をもつ形状モデルを生成できることを示した。また、部分的な計測データを複数与えることで、生成される形状モデルが個人の形状に近づくことを確認した。


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