内容梗概
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3次元衣服形状の直接操作による型紙設計


衣服の型紙設計を3次元空間において対話的におこなうための手法について述べる。

オーダーメイドの衣服を製作する場合、注文主の嗜好を満足し、かつ体型にマッチした衣服形状を生成するためには、衣服設計における各種の作業を現実空間で繰り返しおこなう必要がある。そこで、衣服の3次元形状を仮想空間上でシミュレートすることによって、これらの作業を効率的におこなう手法に関する研究がさかんにおこなわれている。

オーダーメイドの衣服製作において、注文主がイメージする衣服を設計するためには、注文主の意向を的確に衣服製作者側に伝えることが重要である。このためには注文主が衣服設計過程に直接参加できるような環境が必要であると考えられる。

しかし従来の手法では、型紙の段階で設計をおこなった後に3次元形状を確認するという手順をたどるため、型紙の修正に伴う3次元形状の変化を予測できなければならない。このためには衣服設計に関する知識や経験が必要であり、衣服設計に不慣れなユーザを想定したシステムであるとは言えない。一方で、3次元上で衣服を設計してから型紙を自動生成するという手法もあるが、この場合衣服の立体的な部分を平面展開する際に必要な、ダーツと呼ばれる切り込みの位置を自動計算することが困難である。

そこで本研究では、3次元衣服形状に対する直接操作によって、衣服の3次元形状の変化を対話的に確認しながら2次元の型紙を設計する手法を提案する。一般的に衣服設計は、スリーブ・身頃などの各パーツ部分の型紙の標準モデルを選択し、それぞれに修正を加えてから組み合わせるという手順でおこなわれる。そこで本システムにおいても、ダーツの位置や縫合線の対応が異なる複数の種類の衣服モデルを各パーツごとに用意しておく。ユーザはダーツを増やすといった設計操作を直接実行する代わりに適当な衣服モデルを選択することで対処し、個々の衣服モデルの型紙に対して設計操作を加えていく。

また本システムでは、衣服を四角形構造格子モデルによって表現する。型紙を格子モデル化する場合、縫合する2つの型紙間において境界線上で格子節点数が同一でなければならず、また型紙の輪郭線形状をできるだけ正確に近似する必要がある。四角形構造格子はこれらの条件に適した格子モデルである。ただし、ダーツの入った型紙などのように輪郭線形状が複雑な場合、格子の配列が極端に歪むという問題があるので、本システムではそれぞれの衣服モデルのダーツの位置が一定であることを利用して、あらかじめ型紙を単純な副領域に分割した後に格子を形成することで、この問題に対応している。

3次元衣服形状に対する設計操作によって2次元の型紙を設計するためには、3次元上での入力が2次元上でのどのような設計を意味するのかを定義し、3次元での設計操作を2次元にマッピングする必要がある。本研究では、衣服形状の各パーツ部分が円柱形と類似していることに着目し、衣服設計操作を円柱の直感的な変形操作と対応付けた ''円柱メタファ''によって表現する。つまり、円柱メタファにおいて設計操作を表す3次元ベクトルが入力された場合に、これを円柱座標系における半径方向・中心軸方向・回転方向のベクトル成分に分解し、それぞれを半径の拡大・縮小、中心軸方向への伸縮、横方向への曲げといった変形に対応付ける。本研究で用いる衣服モデルは四角形構造格子で構成されており、この構造格子は衣服モデルの形状を反映するように配置されているので、円柱メタファにおける各座標軸に対応した衣服モデルの特徴軸を構造格子の配列に基づいて定義することによって、円柱メタファにおける3次元と2次元の変化の対応を衣服モデルにも同様に適用する。

さらに、衣服モデルがその形状を反映した構造格子によってモデル化されていることを利用して、設計対象要素のレベルを面・辺・節点という構造格子のレベルに基づいて階層化する。これによってユーザは様々なレベルでの設計が可能であり、設計作業の効率化が考えられる。

以上の手法を実装し、従来の型紙レベルでの設計手法と本手法を、衣服設計に不慣れなユーザを対象として実際に使用してもらい、評価をおこなった。その結果、本手法によって衣服設計に要する時間を約50%短縮できることが分かり、また設計に関する操作性についてもアンケートを通じて高い評価を得ることができた。


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