内容梗概
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注意度に応じた音声メディア制御による会合への多重参加法


本論文は, 音声メディアを利用したテレコミュニケーション環境において, ユーザが同時に複数の会合(コミュニケーションの場)に参加するための手法について述べている.

近年, 分散環境でのコミュニケーションを支援する研究において, インフォーマルなコミュニケーションの支援が重要な課題となっている. これに対して, 電子メディアを利用した従来の多くのテレコミュニケーションツールでは, ユーザはさまざまな情報を交換することができる反面, 自分の興味のある情報がどこにあるか分かりにくいという問題が 指摘されている. インフォーマルコミュニケーションでは コミュニケーションの発生する時間・場所を特定することが難しく, また時間とともに興味のある情報が消滅する場合も多いため, この問題は深刻である.

そこで, この問題への対応策として, ユーザがより多くの情報に出会うことのできる環境を, システム側が提供する方法について考える. その手段として, ユーザが同時に複数の会合に参加できる 会議システムを構築することが考えられる. 従来のテレビ会議のように, 同時にひとつの会合の情報しか 得られないシステムでは, 他の会合で興味のある情報が交換されていたとしても ユーザはそれを知ることはできないが, 同時にいくつかの会合から情報を得ることができれば, 興味のある情報に出会う可能性は高くなる.

本研究では, インフォーマルコミュニケーションにおいては, 会話時の手軽さやノンバーバル情報の伝達といった点で音声メディア が有用であることに注目し, 音声メディアを利用してユーザが複数の会合に参加するシステムの構築を目指す.

先に述べたように, 複数会合に多重参加するシステムでは, 「複数会合の情報が同時に得られること」が望まれる. しかし, 音声メディアのシステムへの適用では, 「複数の音声の混濁が緩和されていること」に配慮する必要がある. これら2つの目標はトレードオフの関係にある. 複数会合の音声が同時に提供される(前者を満たす)システムでは 音声の混濁を緩和することは難しい. また, 単一の会合の音声のみが提供されるシステムでは 音声の混濁の心配はない(後者を満たす)が, その他の会合の音声情報が得られず, 結果として多くの話題に出会う機会が失われる.

そこで, 本研究では 会合に対するユーザの「注意度」に基づいて音声メディアを制御することにより, この2つの目標の両立を図る. ここで, 注意度とは, ユーザがそれぞれの会合に対して とれだけ注意を向けているか, という度合いを定量化したものである.

注意度の概念は, 実世界でわれわれが複数の会話に参加している状況からモデル化している. 通常, 実世界で複数の音声を聞く際に, われわれは全ての音声を完全に聞き取ることはできない. しかし, 興味のない話題に対してはおおまかな情報のみを得, 興味のある話題に対してはより詳細な情報を得ようとすることで, 複数の会話に参加することができる. このように, 実世界では, われわれが各音声に対して払う注意の度合いは異なっており, また注意の度合いによって音声から得る情報の詳細さも異なっている. このことから, 会議システムにおいても, 注意の度合いによって, ユーザが各会合から得る情報の量を規定できると考えられる.

以上の考察に基づき, 本論文では ユーザの注意度に応じた音声メディア制御によって, 複数会合に多重参加する方法を提案する. また本研究では, 提案手法を会議システム上に実装し, 多重参加の実験を行った. この結果, 本手法の適用によって, ユーザは音声の混濁を感じることなく, 同時に複数の会合に参加できることが示された.


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