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低解像度ボクセルデータからの人体姿勢推定


本研究では、計算機に低解像度のボクセルデータとして取り込まれた人体データに対し、人体モデルを用いて姿勢推定を行なう方法を提案する。

遠隔講義や遠隔会議において、現実世界に存在する物体の形状を計算機に取り込み、その形状や姿勢を認識することによって仮想世界を構築する取り組みがなされている。こうした取り組みではボクセルデータで物体形状を表現することが多い。

複数カメラからの画像を利用し、ステレオ計測などの技法を用いて現実空間を再構成することによって、ボクセルデータは生成される。しかし、現在の手法では、計算機の能力やカメラのキャリブレーションなどの影響のため、現実世界の物体を必ずしも高解像度のボクセルで表現できるとは限らず、ボクセルデータのみからでは人体の姿勢を認識することが困難である。

そこで、予め人体モデルを用意し、それを利用することによって、ボクセルデータの解像度の低さを補い姿勢認識を行う。

人体モデルで人体の姿勢を表現するため、人体を関節物体として取り扱う。人体モデルは木構造のデータ構造で表現し、各ノードは体節、体節同士を接続する関節、及び関節角度とその可動範囲の情報を持つ。このように人体をモデル化することで、人体の姿勢を人体モデルのスケール・位置と向き、そして各関節の関節角度で一意に表現することができる。これにより、ボクセルデータで表現された人体(対象人体)の姿勢推定は、ボクセルデータから対象人体のスケール・位置と向き、そして各関節の関節角度を推定することに帰着される。

このうちまず人体のスケールは身長から求める。身長を頭部と足部との高さの差と考え、ボクセルデータから対象人体の高さ方向に垂直な断面積を計算し、人体の断面積の分布を利用して、対象人体の頭部と足部に相当する部分を推定する。

次に人体の位置と向きは、人体の胴体上部の位置と向きから求める。胴体上部の断面はほぼ楕円形をしているため、スケーリングと同じように人体の断面積の分布を利用して、人体の胴体上部に相当する部分を推定し、その断面に対し楕円近似を行い、この楕円の中心と長軸の方向を以て人体の位置と向きを推定する。

関節角度の推定は、ボクセルデータと上で求められたスケールと向きでの人体モデルをボクセル表現に変換したものとのマッチングによって行なう。関節角度推定の手順は、関節角度を可動範囲内でサンプリングし、関節角度に応じて人体モデルの姿勢を変え、それをボクセルデータと同じ解像度のボクセルモデルに変換して、ボクセルデータとマッチングする。このマッチングにおいて、ボクセルの重なりが多いほど人体モデルの姿勢と対象人体の姿勢とが類似していると考え、ボクセルの重なりをマッチングの評価の基準として、最も評価が高くなるようなボクセルモデルの関節角度を推定結果とする。

ボクセルモデルに変換する際、次に述べる解像度に対するボクセルデータの特徴を考慮する。本研究で取り扱うボクセルデータは、ボクセルデータ上での人体の体積が、実際の人体の体積より大きくなり、その度合いはボクセル1個あたりのサイズが大きいほど大きくなるという特徴がある。そこで、ボクセルモデルもこの特徴を有するように作成する。

また、関節角度のサンプリング総数を少なくするため、関節角度は全ての関節を一度に推定するのではなく、木構造をなす人体モデル内のノードに順番をつけ、順次に関節角度を推定する。処理を行なうノードの順番を決定する際には、各体節の可動領域がなるべく干渉しないように考慮する。

実験として、人体データから複数の解像度のボクセルデータを作成し、本稿で提案する方法を用いて、そのボクセルデータに対し姿勢推定を行なった。その結果、姿勢推定の結果が悪い例も存在したが、ほとんどの例について正しい姿勢推定を行うことができた。

姿勢推定の結果が悪くなった例の要因として、ある関節角度の推定の誤差が、他の関節角度の推定結果に影響を与えてしまうことが挙げられる。今後の課題として、この問題を解決する必要がある。


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