内容梗概
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遠隔地間通信会議における「横顔視線一致」による対話の実現


本報告書は、遠隔地間通信会議(以下、遠隔会議と略す)において、対面会議に近い対話を実現する、「横顔視線一致」の方法について述べる。

遠隔会議とは、自分と異なる場所にいる複数の相手とのコミュニケーションを実現するものである。従来の電話やテレビ電話では実現できなかった、複数の相手と同時にコミュニケーションできることは、人の交流を活性化し、生活の向上及び社会、文化の発展に貢献する。

遠隔会議は、参加者が実際に一地点に集まって行う対面会議と比較して、メディアの種類が画像と音声に制限されている。相手の様子は、カメラで撮影された画像と、マイク入力で得られた音声を通してしか知ることができない。そのため、遠隔会議において、対面会議同様のコミュニケーションを実現する際には、次の二つの要素が重要となる。

一つ目の要素は、参加者にとって、対話の当事者(発言者一人と発言対象者一人)の「視線の一致」が実現していることである。参加者が、対話の当事者の「視線の一致」を確認できるならば、参加者にとって、発言者の意図した発言対象者が誰であるのかを、特定するのが容易となる。これは、会議中の話の流れを追う上で重要なことである。その一方で、対話の当事者にとっての「視線の一致」は、相手の関心の有無が確認できる程度に実現されていれば良い。これは、日本では欧米と異なって人と話をするときに、相手の目を見る習慣があまりないからである。

二つ目の要素は、参加者による「自画像の確認」である。参加者は、自分がカメラの撮影範囲に入っているかどうかを確かめる必要があり、自分の姿がどのような形で相手に伝わっているのかを確認することは重要である。参加者が対話の当事者である場合に、「自画像の確認」は特に重要となる。

従来の遠隔会議システムでは、この二つの要素が充分に実現されないことから、参加者間のコミュニケーションに支障をきたしている。

本研究で提案する「横顔視線一致」は、特別なハードウェアに依存することなく、簡単かつ低コストのシステム上で、この二つの要素を実現する。この方法は、参加者の正面より左右90度方向(左右両方、もしくは左右のどちらか)にカメラを設置し、参加者の横顔画像を撮影する。そして、対話の当事者の横顔画像を画面上で水平に向かい合わせで配置する。

一つ目の要素の「視線の一致」について、「横顔視線一致」は、人が誰かの視線の向きを知ろうとする際に、その相手の両目の見る向きが不明ならば、顔の向きから視線を判断することを利用している。対話の当事者の視線の向きを横顔画像の向きによって表して、横顔画像を水平に向かい合わせに配置することで、対話の当事者の視線の向きを互いに一致させる。これにより、参加者は、対話の当事者の「視線の一致」を確認することができる。

二つ目の要素の「自画像の確認」について、「横顔視線一致」は、発言者と発言対象者の横顔画像を必ず表示する。これにより、参加者は「自画像の確認」が可能である。

また、「横顔視線一致」は、対話の当事者に対して適用する方法であり、それ以外の参加者には適用しないでよいことから、本方法では会議参加者の人数を制限しない。

「横顔視線一致」を実現するために、会議システムを試作した。試作システムによる遠隔会議を行って、「横顔視線一致」の評価を行った。特に、会議参加者へのインタビューにより、「横顔視線一致」によって、参加者が、対話の当事者の「視線の一致」を確認できるかどうかを評価した。その結果、全ての参加者が、対話の当事者の「視線の一致」を確認した。また、試作システムを利用して、会議における三つの対話方法を一対比較法で比較し、「横顔視線一致」において、対話の当事者にとっての「視線の一致」がどれだけ達成されているかを評価した。その結果、対話の当事者にとっては、従来の遠隔会議システムと同程度の「視線の一致」があることを示した。さらに、「横顔視線一致」における「自画像の確認」の有効性を確認する実験を行い、その結果、「横顔視線一致」における「自画像の確認」は有効であることを示した。


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