内容梗概
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講義ビデオ作成における複数カメラからの映像選択


大学の講義室に配置された複数の首振りカメラを用いてリアルタイムに講義ビデオを作成する方法を提案する。本研究では特に、講義ビデオ作成を目的とした、複数カメラから得られた複数映像の選択方法を提案する。

講義は大学の最も重要な機能の一つであるが、時間・地理的な制限のため生徒が受講できないことも多い。そこで、その制限をなくすための有効な手段として講義の録画が考えられる。講義中に見るべき対象は一般に複数であると考えられるが、録画ではある時刻においては一つの視点しか提供できない。そこで、複数視点、つまり複数の首振りカメラを用意し、そこから得られる複数の映像を用いて講義映像ストリームを作成し、講義ビデオを作成する方法を提案する。

講義ビデオ作成の目的は講義情報の映像化である。ここで講義情報とは、講義に関係する全てを指す。そこで、講義情報を明確にするため講義についての分析を行い、講義形成要素のうち「講師・板書・生徒」の3つを挙げ、これらを、「映像化対象」、つまりカメラが映像に収めるべき対象と定める。

そして、講義ビデオを作成するための段階を映像化対象の映像を提供する「カメラ機能」段階、その映像化の時点で適切な視点を提供する「機能分散」段階、そして各カメラから得られた映像のうち 1つを生徒の立場から選択する「映像選択」段階の 3つにわけ、各段階についてその実現手法を提案する。

カメラ機能は各映像化対象の映像を提供する。各映像化対象に対応して、「講師撮影機能」、「板書撮影機能」、「生徒撮影機能」の3つのカメラ機能を定める。講師撮影機能は講師の映像を提供する。その際、首振りカメラを用いて講師を捉えるためには講師の位置情報が必要なので、カメラを2つ用いた三角測量で求める。また、板書撮影機能は講師が現在使用している部分の黒板の映像を提供する。講師が使用している黒板部分の判断は講師位置を元にして行う。生徒撮影機能は生徒の「様子」を撮ることが目的であるとし、生徒全般を見回すような映像を提供する。

次の段階として映像化対象の映像化における適切な視点の提供を行う。各カメラ機能がその映像化対象の映像を撮る上で最適なカメラを使用できることが理想である。しかし、カメラ資源は有限であるため、全カメラ機能で最適なカメラが使用可能であるとは限らない。そこで、カメラ機能に優先順位を付けたカメラへの割り付け方法を考え、カメラ機能分散を実現する。講師撮影機能では三角測量を行うため、適切であると考えられる2つのカメラに動的に割り付ける。次に、板書撮影機能では講師撮影機能が使用しないカメラのうち板書撮影可能なカメラを割り付け対象とし、講師が黒板近くにいるときだけ板書撮影機能のカメラへの割り付けを行う。また、生徒撮影機能では生徒全般の様子をとる目的から他機能が割り付けられていないカメラのうち、適切な全てのカメラに対して割り付けを行う。

最後に、映像選択段階として、この2段階を経て得られた各カメラ映像のうち一つの映像を講義ビデオ作成の目的に沿って選択する手法を提案する。講義ビデオは生徒の立場で作成するので、生徒の代わりとして映像選択を行うプロセスが必要である。これを本研究では Directorと名付ける。

そして、Directorにおいて、各カメラ機能が取得した映像の中で良く撮れている映像を選択するために「確信度」を、また、生徒側の要求に沿った選択を行なうために「確信度修正値」を用意し、映像選択を行なう手法を提案する。「確信度」は各カメラ機能でそれぞれの基準に基づいて算出される値で、「その映像がどれだけ望ましいものであるか」を表す指数である。講師撮影機能では講師-カメラ間距離を、板書撮影機能では講師-黒板間距離を、そして、生徒撮影機能では講義室内の生徒の出席の分布状況をパラメータとして用いて確信度を算出する。また、「確信度修正値」は、講義中に見るべき対象に対する生徒側の興味の時間的な推移等を確信度に反映するための、各映像の確信度に対する修正値である。

ここで提案した手法を用いて実際に講義ビデオ作成システムを構成し、4台の首振りカメラが設置された講義室を使って実験を行った。結果として得られた講義ビデオに対し、各カメラ機能による映像取得状況と確信度算出状況、講義状況に基づくカメラ機能割り付けの変化、映像選択段階での確信度に関しての評価を行ない、最後に選択された各映像に対しての主観的な評価を行なった。


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