内容梗概
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視点の違う2つの首振りカメラ画像間の差分に基づいた講師追跡法


遠隔講義において,講師像を常にズームアップした画像を撮るという,自動講師追跡カメラワークを実現する手法を考える.

講師が講義室内を動き回る場合に,講師像を常にズームアップした画像を撮るためには,講師の位置を計測し,講師のいる方向に首振りカメラを回転させて講師の動きに追従する必要がある.講師の位置の計測には2つのカメラの画像上での講師の2次元座標を検出し,そのときの首振りカメラの角度とズーム量から,三角測量の原理によって空間位置を求める.

本研究では画像から講師の位置を検出する際に,照明変化やカメラの首振りが起きても正しく講師領域を抽出することができる手法として,視点の違う2つのカメラ画像間の差分画像を生成する方法を提案する.

講師追跡は,パン,チルトの首振りが可能な複数台のカメラを用いて行なう.また,講義室内を動き回る講師は1人であるとし,生徒は席から動かないものとする.

カメラ画像上での講師位置を検出する方法には,背景差分によって講師領域だけを差分画像に抽出する方法が考えられる.しかし,背景差分では,照明変化やカメラの首振りが起こると,講師領域以外にも差分が現れ,講師領域だけを抽出することができない.時刻 tでのカメラ画像 から,講師領域だけを抽出するためには,仮に講師がいないと仮定した場合の画像 が必要となるが,背景差分ではこの画像 を,講師がいない時刻 に撮影した背景画像 によって代用している.このため照明変化などにより が成り立たなくなると,講師領域だけを抽出することができなくなる.時刻 t における背景画像 を得ることが出来れば,この問題を解決することができる.そこで,離れた視点から撮影した別のカメラから,この時刻 t における背景画像 が 生成できることに注目する.

本研究では,視点の違う2つのカメラ , を用い,カメラ の画像 を,講義室内の静止物体の空間位置を記述したモデルに基づいて,カメラ の視点から見たかのような画像 に変換し,カメラ の画像 との差分画像 を生成することにより,講師領域を抽出する手法を提案する.

画像 から画像 への変換は,画像 の画素 に対応する講義室内の静止物体のモデル上の点 を調べ,さらに,そのモデル上の点 に対応する画像 の画素 を調べ, とする. モデルには講師は含まれないので,画像 上で講師を写像している画素 は,講師がいないと仮定したときの画像 上の画素 に対応する静止物体上の点 を写像しているとして,画像 上の画素 に変換される.この静止物体上の点 はカメラ から見たとき講師の陰に隠れて画像 には写像されていないが,視点の違いによりカメラ から見た画像 には写像され,画素 は静止物体上の点 を写像している.よって,画素 は講師を写像し,画素 は静止物体上の点を写像しているので, には差分が現れる.また,画素 が講師を写像しているときにも,画素 は静止物体上の点を写像しているので, にも差分が現れる.差分画像 に差分の現れた領域が講師領域として得られる.

この手法で正しく講師領域を抽出できるためには,カメラ に同じ静止物体が写っている必要がある.本研究では,この条件を満たすように,カメラ を2台以上の複数台のカメラから動的に選択する方法についても述べる.

この手法に基づいた講師追跡の実験を行なった.この手法では同じモデル上の点がカメラ で同じ画素値である必要があるが,講義室内の蛍光灯の光ではカメラ間での画素値がほとんど違わない場合が多く,照明変化やカメラの首振りを行なっても常に差分画像 は講師領域だけを抜き出し,正しく講師位置を計測することができた.しかし,窓から太陽光線が差し込む場合などには光が静止物体に反射して違った画素値に写像されるなどの問題があり,今後さらに検討する必要がある.


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