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有限要素法を用いた人体モデルの動作時の弾性変形


近年,計算機の性能の飛躍的な向上によるコンピューターグラフィクス技術の発達により,人体の3次元形状モデルを用いたアニメーション画像がテレビ,映画などの映像産業や,ゲームなどで盛んに使用されるようになってきた.これらの分野ではリアルな人間のアニメーション画像をコンピュータグラフィックスにより作り出すことが重要な目的となる.

人体の動作のアニメーション画像の生成法には,人体の手足などの各体節を剛体とした関節モデルを用いる手法が用いられている.しかし,人体の各体節は剛体ではなく柔軟な物体である.動作にともない,手足の各体節は,筋肉の弛緩により形状を変化させる.また,胴体部の脂肪は動作に伴う慣性力等により形状を変化させる.前出の手法では各体節を剛体として考えるために,各体節の形状が変形せず,人体の動作の自然なアニメーション画像を生成できない.

本論文では,3次元人体形状モデルの胴体部に脂肪をつけ,人体の動作に伴う胴体部の形状の変形をシミュレートし,人間の動作のアニメーション画像を得る手法を提案する.

本研究では,予め3次元人体モデルを用意しこれを原形モデルと呼ぶ.原形モデルは,実在の人体を3次元計測して作成した個人体型モデルを用いる.原形モデルの胴体部に脂肪をつけ,その脂肪をつけたモデルを表面モデルと呼ぶ.原形モデルに,脂肪をつける部分は,実際の人体において脂肪の割合の大きい腹部及び臀部とする.モデルは辺で接続した多数の多角形パッチを用いて近似的に表現する.パッチモデルは,十分な数のパッチを使用すれば,複雑な形状を小さい誤差で表現できる.また,各頂点は,それぞれ独立して3次元直交座標の三つの自由度を持つため,変形に関しても自由度が高い.

表面モデルと原形モデルの間の脂肪部分を,Hookeの法則に従う線形弾性体であるHooke弾性体と仮定する.脂肪部分を柔軟な弾性体と考えることで,人体を剛体と考える変形よりもより自然な変形が行われることができる.ここでは,その弾性体とみなす部分を弾性体部分と呼ぶ.弾性体部分に有限要素法を用いて人体の動作に伴う脂肪部分の変形をシミュレートする.

有限要素法とは,連続体系をこれと等価な離散系に置き換え,有限要素と呼ばれる部分領域の振る舞いを関数近似し,それらを統合することにより系の全体の振る舞いを求める手法である.有限要素法を用いれば,複雑な構造物の解析を同じ計算の繰り返しにより実現できる.この手法を用いれば,人体の動作時の,弾性体部分についての運動方程式から,弾性体の頂点の変位を計算することができる.

ここでは,弾性体部分を,三角柱の有限要素に分割し,各有限要素について,外力と変位との関係を記述するマトリクスを生成する.それらを統合することにより全体の外力と変位との関係を記述するマトリクスを生成する.最後に,そのマトリクスを用いて,弾性体部分についての運動方程式を解き,動作時の弾性体部分の各頂点の変位を計算する.

実験として垂直跳び,歩行,走行の三つの動作について人体形状の変形をシミュレートした.それぞれの動作を8フレームに分け,逐次的に変形を行い,実際にアニメーション画像を作成した.そして,人体の動作の自然なアニメーション画像が生成されるかを検証した.その結果,垂直跳び及び歩行については,脂肪の部分が自然な変形を見せ,人体の動作の自然なアニメーションが作成できたと考える.走行については,脂肪部分と人体の他の部分の接触判定を行なわなかったことと,走行時に人体の姿勢が前傾姿勢をとることについて考察しなかったために,自然な変形が行なわれなかった.人体の姿勢変化を考慮した関節モデルを持ちいた方法と組み合わせて用いれば,本手法は有効であると考える.


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