内容梗概
[English | 論文 | 美濃研の研究 | 美濃研究室 ]


点の対応に基づく3次元形状の類似度尺度


近年、コンピュータの性能が飛躍的に進歩し、3次元世界を表現することが容易になってきた。例えば、コンピュータ上の仮想空間を体験するような仮想現実など様々なところで3次元表現が使われている。その中で、3次元形状モデルは3次元世界に存在する物体を表現する手段として頻繁に用いられている。 このように、3次元形状モデルが数多く使用されるようになると、それらのモデルの分類や検索が必要になってくる。そのための方法の1つとして、形状モデルの類似度尺度を定義するという方法が挙げられる。形状モデルの類似度尺度が定義できれば、類似するものをまとめることで形状モデルの分類が可能になる。また、問い合わせに形状モデルを示し、それに類似する形状モデルをデータベースから検索することも可能になる。形状モデルの類似度尺度は形状による物体認識にも利用することができる。

従来、形状を関数表現し、そのパラメータによって類似度を定義するといった手法が提案されている。これらは対象形状が関数表現できるものに限られる。また、大まかな形状比較には適しているが、類似した形状の細かな比較には向いていない。

本報告書では、2つのモデル間でのモデル上の点の対応に基づく、3次元形状モデルの類似度尺度を提案する。本手法は、形状を的確に表現するのに十分な数の点をモデル上にとりさえすれば、任意の類似した形状に対して適用することができる。また、モデル上の点集合によって形状を表現するので、類似した形状どうしの細かな比較に適した手法である。ただし、大きく異なる形状の比較においては点の対応をとるのが困難となる。

本手法では、まず各3次元形状モデル上に均等に同数の点をとり、点の間の距離が最大となる2点について、その距離が一定になるようにスケーリングを行なう。このとき、対象とする2つの形状モデルが類似していれば、2つのモデル間でモデル上の点の対応をとることができ、一方のモデル上のある2点の間の距離は、それらの点に対応するもう一方のモデル上の2点の間の距離に近い値になる。すなわち、この距離の差(距離誤差)が小さいほど2つのモデルは類似している。そこで、すべての点の対応の組合せに対する距離誤差の平均値を最小にするような点の対応を求め、この最小値を2つのモデルの非類似度と定義する。ここでは、距離誤差の平均の最小化を点の対応を試行錯誤的に入れ換えることにより行なう。ただし、計算時間を短縮し、極小値に落ち込みにくくするために、最小化を行なう前にGunsel and Tekalpによる手法により点の初期対応を求めておく。

形状の類似度尺度に求められる性質として、以下のようなものが挙げられる。まず、形状自体が変わらなければ類似度も変化してはならない。よって、類似度尺度は形状の相似変換(平行、回転移動、鏡像変換及び拡大、縮小)に対して不変であるべきである。次に、定義した類似度尺度を非類似度として見たとき、それが距離の公理(非負、同一性、対称性、三角不等式)を満たしていることが望ましい。非類似度が距離の公理を満たせば、各形状を特徴空間に布置することができ、分類や認識において距離に関する様々な手法を適用することができる。最後に、定義した類似度尺度を利用するのはあくまでも人間であるから、それが人間の感性に一致していることが望ましい。

本類似度尺度は、モデル上の点の間の距離のみを用いて定義され、かつ、最初にモデルのスケーリングを行なっているので、相似変換に対して不変である。また、これを非類似度として見たとき距離の公理を満たす。

本手法を10体の人体モデルからなる45通りの2つの人体モデルの組に対して適用し、類似度を求める実験を行なった。その結果、本手法により得られる2つのモデル間でのモデル上の点の対応は自然なものであることがわかり、本手法の妥当性が確認できた。さらに、同じ10体の人体モデルに対してアンケート調査を行なうことにより、人間の感性による類似度を求めた。そして、数量化4類を用いて、本手法及びアンケートにより得られた非類似度をそれぞれ反映するように、各モデルを2次元平面上の点へ射影し、それらの点の分布の比較を行なった。その結果、本類似度尺度は人間の感性に近い結果を示すことがわかり、本手法の有効性が確認できた。


学位論文のページに戻る